たびたび起こるSNSの「旦那の愚痴」バズり 一方で夫たちからの「妻の愚痴」は少ない…温度差を専門家が解説

国内 社会

  • ブックマーク

なぜ夫は妻の愚痴を公言しないのか

 一方で、SNSを見渡すと「夫が妻の愚痴をこぼす投稿」は、圧倒的に少ない。実社会でも、女性同士が集まると夫の愚痴大会が始まりがちだが、男性同士で妻の文句を言い合っている光景は珍しい。一応、ネット上には「メシマズ嫁」という古くからの批判ワードはあるものの、近年、これがバズったという例は聞かない。

 黒川さんによると、そこには生物としての本能が深く関わっているという。

「男性が、謙遜として『愚妻』と呼ぶことはあっても、妻の愚痴を言いふらさないのは、それが自身の生殖能力の低さを露呈することになるからです。要するに、オスとしてカッコ悪すぎるんですね」

 雌雄生殖を行う動物のオスにとって、遺伝子を残すためにはメスの存在が不可欠だ。特定のメスを確保して、豊かな生活環境を与え、そのホルモンバランスを整えること。それこそが、よりよい子孫を残すために必須条件となる。

「だからこそ、鳥のオスなどはメスのために巣を整え、自分が健康で免疫力が高いことをアピールするために、美しい鳴き声や羽、ダンスなどの派手なパフォーマンスを披露します。

 特に、妊娠と授乳という負担のある哺乳類は、母健康とホルモンバランス(心)の安定が、そのまま子孫の人生の質に直結します。つまり、『惚れた女を幸せにすること』はオスの生殖能力の一部で、男性の脳はそれを本能的に知っているんです」

「好き」から始まる

 この本能は、誰かを好きになった時点で起動するという。

「脳の感覚として、『惚れた女を幸せにすることは男の甲斐性』なんです。そのため、妻の悪口を垂れ流すことは、自分の生殖能力の低さを露呈することになるので、本能的に恥ずかしいと感じるのでしょう」

 対してメス側は、より免疫力の高いオスを厳選して、そのオスがよりよい生殖のためにいかにいい環境を与え続けてくれるかを厳しく監視することで、生殖の質を上げようとする。妻が夫に厳しいのは生物として当然の摂理ということなのか。

「その要求を満足させてくれるオスがいれば、メスは浮気もせず尽くします。男性の生存率やパフォーマンスが高まることは、自らと子孫が生き残る可能性を上げることになるからです。生殖本能は、命が永遠でない地球生物にとって、種を絶やさないための、強い強い感覚。誰も逆らうことはできません」

「妻の愚痴」がバズるのは、それだけ救いを求めている人が多いという証拠。妻たちは、日々の小さなイライラをユーモアにあ換えて吐き出すことで、なんとか自分を保ち、心を慰めているのだ。

 ただ、男性側に知っておいてほしいのは、妻がそこまでして自分を慰めなければならない状況自体、実は夫としてのピンチだということ。積年の恨みでいつかポイッと捨てられないためにも、目の前のパートナーを笑顔にできているか、自分自身を振り返るきっかけにしてみてはどうだろう。

黒川伊保子さん
株式会社 感性リサーチ代表取締役。人工知能研究者、随筆家、日本ネーミング協会会長、日本文藝家協会会員。2018年『妻のトリセツ』がベストセラーに。以降、数多くのトリセツシリーズを出版。

取材・文/天野那果

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。