“高市旋風”を生んだ「若者の右傾化」でも「排外主義の高まり」でもない“理由”…リベラルが読み違えた「ルールを守らない外国人は出ていってもらう」発言の影響とは

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 第1回【高市首相に対する中国の強硬な姿勢が“自民圧勝”を招いたのか? 「争点なき総選挙」の勝敗を分けた自民と中道の“埋めがたい違い”】からの続き──。自民党が衆院選で圧勝した。アメリカ政治・外交、国際関係論が専門で、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の三牧聖子教授は、「高市早苗首相の中国に対する強硬姿勢も有権者の支持を集め、自民党が316議席を獲得する原因になったのではないか」と指摘する。(全3回の第2回)

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 昨年11月、高市首相は衆院予算委員会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と答弁。これに中国は猛反発し、日中関係が今も非常に冷え込んでいる。

 衆議院は1月23日に解散。翌24日に与野党の党首はインターネット放送「ニコニコ生放送」の党首討論会に出席し、論戦を戦わせた。

 中道改革連合の共同代表を務めていた野田佳彦氏は台湾有事の問題に触れ、「軍国主義のレッテルを貼られている」と糾弾。これに高市氏は「各国の首脳と会談し、説明を行っている」と反論した。

 より強いトーンを高市氏が打ち出したのは1月26日。テレビ朝日の「報道ステーション」で行われた党首討論で、高市氏は次のように発言した。

「台湾で大変なことが起きたとき、私たちは日本人や米国人を救いに行かなきゃいけない。共同行動を取っている米軍が攻撃を受けたとき、日本が何もせずに逃げ帰れば、日米同盟はつぶれる」(註)

 国会での「存立危機事態になり得る」との答弁は撤回しないと改めて強調。観光・留学目的の訪日自粛を国民に呼びかけ、レアアースの実質的な輸出規制を発動させるなど、圧力を強める中国とは安易に妥協しないとのメッセージを有権者に送った。

 だが、ここで一つの疑問が生じる。なぜ、高市氏は中国に対し強い姿勢で臨んだほうが有権者の支持を集められると読むことができたのだろうか。

“中国の横暴”

「野田氏は衆院選の間、中国がレアアースに対して実質的な輸出規制を発動したことを憂慮し、日中の関係改善を訴えました。高市氏との主張とは対照的で、今回の衆院選で唯一の争点になったと言っても過言ではないと思います。私は野田氏の主張のほうが現実的だと考えていますが、有権者は『弱腰』、『中国に配慮し過ぎだ』と受け止めました。なぜ有権者は高市氏の強硬姿勢を是としたのか、それはいわゆる“中国の横暴”に対して、もともと批判的な有権者が多かったからでしょう」(同・三牧教授)

 中国は2023年に反スパイ法を改正し、日本人を相次いで逮捕・拘束している。スパイ行為の定義は曖昧で、当局の恣意的な運用を疑う声は多い。

「さらに中国は東シナ海やフィリピン沖で権益拡大を狙って海洋進出を強化しています。フィリピンの公船に放水や衝突を繰り返すなど露骨な示威行為を行っているほか、昨年5月には海警船4隻が日本の領海に侵入しました。習近平国家主席は台湾統一を最重要の政策と位置づけ、『武力行使を放棄しない』と公言しています。こうした中国の覇権主義的な姿勢を多くの有権者が問題視していました。さらに昨年11月、在大阪中国総領事の薛剣氏が、高市氏の台湾有事に関する答弁に対し、Xで『汚い首は斬ってやる』と投稿しました。これに有権者は強く反発しましたから、今回の衆院選でも高市氏の対中強硬路線を評価したのでしょう。またオーバーツーリズムを含む広義の外国人問題も高市氏の支持につながったと考えています」(同・三牧教授)

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