高市首相に対する中国の強硬な姿勢が“自民圧勝”を招いたのか? 「争点なき総選挙」の勝敗を分けた自民と中道の“埋めがたい違い”
実は存在した争点
「私も基本的に異論はありません。とはいえ、さすがに高市旋風だけで全ての選挙結果を説明するのも無理があるのではないでしょうか。例えば争点とは異なるかもしれませんが、『中道改革連合にはがっかりした』と失望した有権者も相当な数に達し、自民圧勝に影響を与えたはずです。特に私の印象に残ったのは、自民は“保守”を自負しながらも、選挙戦では高市氏だけでなく、片山さつき氏、有村治子氏、小野田紀美氏と女性議員の姿を見る機会が多かったことです。一方、“リベラル”を標榜しているはずの中道は『女性議員が頑張っている』との印象に乏しかったと言わざるを得ません。女性議員を巡る両党の差は、有権者が中道を評価しなかったポイントの一つだったと思います」
大手メディアの「争点はなかった」との結論も、やはり大げさかもしれない。三牧教授は「多くの有権者が『この主張は自民と中道では明確に違う』と感じ、重要な争点だと判断した政治的論点は存在したと思っています。物価高問題などに比して目立たなかったかもしれませんが、それは対中外交を巡る議論であり、衆院選の結果に大きな影響を与えた可能性があると考えています」と指摘する。
昨年11月、高市首相は衆院予算委員会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と答弁。これに中国は猛反発し、今も日中関係が非常に冷え込んでいるのはご存知の通りだ。
高市氏の“対中強硬姿勢”
日中の外交問題を巡っては1月26日、テレビ朝日の報道番組で実施された党首討論で高市氏は次のように発言した。
「台湾と日本の距離というのは、東京から熱海の間ぐらいですよね。そこで大変なことが起きた時に、私たちは台湾にいらっしゃる日本人やアメリカ人を救いに行かなきゃいけないわけです。そこで共同行動をとる場合もあるわけです。そこで共同で行動を取っているアメリカ軍が攻撃を受けた時に、日本が何にもせずに逃げ帰ると日米同盟が潰れます」(註1)
国会での「存立危機事態になり得る」との答弁は撤回しない姿勢を改めて示した。中国は国民に観光や留学による訪日の自粛を求め、レアアースの実質的な輸出規制を発動することで対日圧力を強めている。だが高市氏は「中国とは安易に妥協しない」というメッセージを有権者に送ったわけだ。
一方、中道の共同代表を務めていた野田佳彦氏は1月28日、横浜市内の演説で高市氏の“対中強硬姿勢”を次のように批判した。
「高市さんは台湾有事の問題も明快に言い過ぎている。勇ましいことを言って日本がピンチになれば泣くのは皆さんだ。(中国との)経済の交流が途絶えて、レアアースが入らなくなれば困るのは日本だ」(註2)
「日中関係の悪化という問題を現実的な視点から捉えると、やはりレアアースの問題が大きな懸念材料として浮上します。中国は現在、日本に対するレアアースの輸出に実質的な規制をかけています。『レアアース輸出規制は中国経済にも大きな打撃になるから、やらないだろう』という楽観論もありますが、問題は中国が規制を緩めることも強めることもできる選択肢を持つことです。他方、直近の日本には代替の選択肢がない。中国が強硬に出た場合に、日本の産業界に広範な悪影響が出るのは確実です。実際、一部の生産業からは悲鳴が上がっています。となれば、野田氏の演説のほうが有権者の心に届いても不思議はなかったはずなのです」(同・三牧教授)
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