「りくりゅうペアにCMオファー殺到」は本当か? 広告業界が“ウインタースポーツ”選手のCM起用に消極的になる“意外な理由”
ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートペアで金メダルを獲得した三浦璃来(24)、木原龍一(33)。彼らのCM出演に関する記事が複数登場した。なかには「オファー殺到か!」というものもある。記事では2人の信頼感や互いへの気遣い、結成から7年を経ての金メダル獲得という劇的ストーリーから、タレント性、話題性は十分だと説明。ギャラは単独で1000万円、ペアで3000万円、いやいや浅田真央の3000~5000万円を上回るのでは、といった分析まであった。なお、2人が所属する木下グループのCMにはすでに出演している。【取材・文=中川淳一郎】
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いくらタレント性があっても
他にもネット上では、三浦を軽々と抱えたり、持ち上げることから「木原運輸」という言葉が誕生したのに合わせて“運送会社”のCMが向いているとの意見も。2人がゲーム「桃太郎電鉄」をプレイしているので同ゲームのCMがいいのでは、といった期待も高まっている。
というわけで、広告業界の関係者に実際の見立てを聞いてみた。40代映像プランナー男性はこう語る。
「りくりゅうは絶大な好感度を獲得したため、確かに争奪戦になる可能性はあります。木原選手が超人的な力を見せたことや、長期にわたる2人の絆と努力も重要ポイント。何よりも『日本初のフィギュアペア金メダル』なので、『挑戦』や『諦めない』といったテーマの商品に向いているのでは。あとは、三浦選手が空中を飛んでも木原選手が受け止めてくれるという安心感。保険のCMにも向いているかもしれません。木原選手は英語が流暢で、三浦選手も着実に上達しているようなので英会話学校のCMもアリかな」
このようにCMタレントとしての価値は十分にあるのは間違いない。ただ、かつて広告会社に勤務し、この29年間ほど広告業界と接点がある私には、若干の懸念がある。それは浅田真央さんや羽生結弦さん、荒川静香さん、上村愛子さんといった別格の存在を除き、いくらタレント性があっても、広告業界では“ウインタースポーツ”の選手が「CMにあまり向いていない」と捉えられている現実があるからだ。
圧倒的な実力を誇ったスピードスケートの小平奈緒さんですら、ナショナルクライアントのCMには出ていない。2018年平昌大会のスピードスケート500メートルでは、銀メダルとなり悔し涙を流す韓国のイ・サンファさんを小平さんが抱きしめ、ねぎらいの言葉をかけた。金メダリスト・小平さんとイさんの姿は「友情」「戦友」といった言葉で評された。この2人が共演するCMもあり得るかと思ったが、結果的にはなかった。
1998年長野五輪ジャンプの原田雅彦さんも、あれだけの陽気キャラかつ失敗からの大成功という劇的ストーリーがあるのに、所属する雪印以外の大手企業のCMには登場していないのではないか。
とはいえ、これは選手個人の問題ではない。ウインタースポーツの選手は「冬」のイメージが強いので、春や夏にCMで見てもしっくりこないという面がある。また、スノーボードやスキージャンプの選手はヘルメットとゴーグルを装着するため、競技中の表情が読み取りづらく、どうしても印象が薄くなってしまう。
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