五輪惨敗のカーリング 「野球のように選抜チームを作るべき」が的外れな3つの理由

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オーケストラとジャズセッション

「他にも理由があります。試合直前に選抜チームが行う合宿制度はカーリングと相性が悪いんです。選抜方式だと、普段は別チームでプレーしている選手たちが、国際大会直前に集合して数週間で仕上げる。でもカーリングは、ショット順、戦術の優先順位、ミスのフォローなどが無意識レベルで共有されていないと厳しい。個々の溝は、短期間の合宿では絶対に埋まりません」

 ダメ押しは、カネの問題である。

「強化費は限られています。選抜しても世界で勝てる保証はなく、むしろ既存チームの完成度を壊すリスクが高いため、選抜チームを作るよりも強い既存チームをそのまま出す方が合理的です。“代表を選ぶ競技”ではなく、“代表になるチームを育てる競技”なのです」

 たとえて言うなら、サッカーなど多くの団体競技の選抜チームは「オーケストラ」。そこには譜面があり、指揮者がいて、優秀な演奏者がいる。

 しかしカーリングは、指揮者無し、全員が即興で曲を作る、いわば「ジャズセッション」なのである。

唯一例外的に成立するケースとは

 カーリングという競技の特殊性、そしてスキップの重要性が非常に高い、ということはわかった。それならば、まずその国で一番優秀なスキップを選び、そのスキップが残りのメンバーを決めれば良いのではないか。

「その案は、理屈としてはかなり正しく、唯一成立しうる選抜方式といえるかもしれません。ただ、それでも現実的に厳しい理由がいくつかあります。まず、“一番優秀なスキップ”を決められない問題。カーリングにおいてスキップの評価は極端に曖昧です。チームの完成度に依存しているからです。単に“良いチーム”に乗ってるだけの可能性がありますし、得点貢献率など個人指標がほぼ意味を持たない。つまり、スキップ単体の実力を分離評価できないのです」

 野球ならOPSなどの諸指標、サッカーなら得点関与率などがあるが、カーリングの個人成績は大会や対戦相手のレベルに差がありすぎて役に立たないのだとか。

「それに、スキップを“王様”にすると人材が集まりません。理論上はスキップが自由に選べば最強と言えそうですが、現実にはトップ選手ほど“部下扱い”を嫌うもの。結果、二流だけが集まるチームが完成してしまいます」

 実はこれも海外で実例があり、失敗に終わっているという。ただし、例外的に成立するケースがある。

「そのスキップが既に世界トップチームを持っている場合です。つまり、選抜チームではなく、最強スキップのチームがそのまま代表になる。これは結局、今の方式と同じですけどね」

 なんだか『ねずみの嫁入り』のように話が元に戻ってしまったが、まだまだ納得できない方もおられるだろう。

 後編では、たとえば、「トップ選手ほど部下扱いを嫌う」というが、「あなたを五輪に出してあげますよ」と誘われたら拒否する選手はいないのではないか、などの疑問について深掘りしている。

デイリー新潮編集部

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