米国民の「トランプ関税」赤字は1人「4万6000円」 違憲判決に抗う「追加関税10%」でますます進む「米国を去ろう」の市場心理
プライベートクレジットに“AI危機”
超党派のシンクタンクであるタックス・ファンデーションによれば、物価高騰による米国民1人当たりの今年の平均負担額は1300ドル(約20万円)となる見込みだ。対して、昨年成立した減税法により、米国民が今年期待できる税金還付額は平均1000ドル(約15万円)に過ぎない。差し引き300ドル(約4万6000円)の赤字では、米国民の懐事情は厳しくなる一方だろう。
筆者が注目しているのは、米金融市場に与える影響だ。
23日のニューヨーク株式市場は、トランプ政権の関税政策を巡る不透明感などから急落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は821ドル安、ハイテク株中心のナスダック総合指数は259ポイント安だった。
折悪しく米株式市場では、人工知能(AI)が既存産業の脅威となるとの警戒が広まっている。中でもソフトウェア業界が深刻な打撃を被るとの見方が根強い。
米アンソロピックの最新AIが、幅広い分野で急速に業務の自動化を進めている。そのため、従来の業務ソフトはAIに代替されるのではないかとの見方が広がり、ソフトウェア業界の株が投げ売りされた。
プライベートクレジットに“AI危機”
ソフトウェアのダメだしは多額の資金を提供してきたプライベートクレジット(ファンド融資)業界にとっても痛手だ。プライベートクレジットは1.8兆ドル規模に急拡大したが、ソフトウェア業界への融資が懸念され、このところ資金の流出が目立ち始めている。
ブルームバーグによれば、AIによる悪影響でプライベートクレジット市場のデフォルト率は最大13%に急上昇する可能性がある。
プライベートクレジットの融資は証券化されて市場に出回っている。年金基金や保険企業などがそれを保有しているため、リーマンショックを引き起こしたサブプライム住宅ローン問題と構図が似ている。
その矢先にブルー・アウル・ショックが起きた。18日、米大手投資ファンドのブルー・アウル・キャピタルが運営する個人投資家向けプライベートクレジットファンドが、四半期毎の解約請求受け付けを停止すると発表した。急速な資金流出を食い止めるためだ。
「米国を買おう」から「米国を去ろう」へ
これを受けて、市場ではパリバ危機の再来ではないかという憶測が広がった。2007年8月にサブプライムローン関連の資産で痛手を受けたBNPパリバ系列ファンドが資金解約を凍結すると、金融市場が動揺し始め、翌2008年9月の米金融大手リーマンブラザーズ破綻につながったとの理解が背景にある。
融資対象も資金の調達方法もパリバ・ショックと今回のファンドのケースでは異なるが、一度高まった不安心理は消えにくいのは同じだ。
「泣き面に蜂」ではないが、投資家がトランプ政権の関税政策などを嫌気して米金融市場を敬遠し始めていることも気がかりだ。ロイターは21日、投資家は過去半年間で米国から約750億ドルの資金を引き揚げたと報じた。
長らく続いてきた「米国を買おう」から「米国を去ろう」へと市場のセンチメントが転換し始めていることの証左だ。
トランプ関税が米国経済に深刻な打撃をもたらさないことを祈るばかりだ。
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