キャンプ中に起きた珍事件…突然実家に帰った「広島捕手」に新監督の人形にボールを当てまくった「中日投手」

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落合博満をモデルに作られた

 投球練習用のダミー人形の“正体”を知って、「えーっ!」と青ざめたのが、中日・山北茂利だ。

 貴重な左のリリーフとして2002年から2年連続で57試合に登板した山北は、さらなる飛躍を期して、04年のキャンプに臨んだ。2月1日のキャンプ初日に行われた異例の紅白戦では、野口茂樹、落合英二らの主力投手とともに紅組の4番手として登板し、1イニングをゼロに抑えた。

 そして、キャンプ終盤の2月20日、山北は内角攻めの感覚を磨くため、用具係が球場の倉庫から探し出してきた打者型のダミー人形を打席に立たせ、胸元をえぐる球を次々に投げ込んだ。

 相手は避けることができない人形だから、投球はボコン、ボコンと体に当たり、死球、また死球。山北は60球投げ込んで満足そうに練習を終えたが、直後、鈴木孝政コーチと話している最中に、突然「えーっ、本当ですか!」と声を上げるなり、顔から血の気が引いた。

 実はダミー人形は、星野仙一監督時代に投手たちの闘志を奮い立たせる目的で、当時巨人の中心打者だった落合博満をモデルに作られたものだった。

 よく見ると、人形は巨人のユニホーム仕様のズボンを履き、ヘルメットにも当時の落合の背番号「6」があった。

 知らぬこととはいえ、よりによってチームの新監督の人形にボールをぶつけまくった山北は気を取り直すと、「これからもどんどん人形に向かって投げ込みます」と宣言した。

 だが、意気込みとは裏腹に、同年は故障の影響で登板7試合に終わり、オフに清水将海との交換トレードでロッテに放出されてしまった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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