「高級車を買う感覚で臨む人も…」 “個人でM&A”が増えているワケ

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ネット上でマッチング

 日本の中小企業や小規模事業主が後継者不在に悩む中、個人でM&A(企業の合併・買収)を行う人が増えているという。

「企業側が数百万円からの価格で譲渡の意思を示し、それを個人が買い取って事業を継ぐ形の企業買収です。ネット上で“マッチング”が行われるなどの手軽さもあって、活況を後押ししています」(経済紙記者)

 現場の後継者難は深刻だ。2023年の「中小企業実態基本調査」によると、生活関連サービス業、娯楽業では38.4%が「事業を継続するつもりはない」と回答。東京商工リサーチの24年の調べでは、企業全体の社長の平均年齢は63歳超、70代以上の社長が3分の1強を占め、いずれも過去最高の数字。新陳代謝は滞っている。

「こうした中、脚光を浴びているのが事業承継型のM&A。公的な相談窓口である『事業承継・引継ぎ支援センター』や地域金融機関、M&A仲介業者などが積極的に介在し、個人が“プレイヤー”として押し寄せているわけです」(同)

第4のキャリア

 M&A仲介業者の半数超は20年代に設立。事業承継型M&Aの支援業者で近年目立つのは、ネットを活用し、年商数億円以下の小規模企業の売買をマッチングする「M&Aプラットフォーマー」。ただし、

「多額の成約料がM&Aのネックになることも」

 とは、業界関係者。

「多くは成約手数料が譲渡金額の平均5%程度で、最低手数料を500万円程度に設定するところも。譲渡金額が小さい案件でも、売り手・買い手の双方から手数料を取る仲介業者は多い。成約金額を負債返済に回したい譲渡側企業が高額の手数料に二の足を踏むケースがあるのも実情」(同)

 そこに着目し、売り手側の手数料無料をうたう業者も現れた。着手金・中間金をタダにし、成約手数料を買い手側のみに設定する業者がそれだ。さらには、買い手側が“会費”を支払えば、ネット上に掲載された案件を交渉できる「サブスクサービス」で収益を上げる業者もある。譲渡金額が小さい企業に限った最安のサービスなら月額4378円(税込)で利用できる。

「500万円以下の案件などは、高級車を買う感覚で自身のキャリア形成としてM&Aに臨む人も多数いる。就職・転職・起業に次ぐ第4のキャリアという位置付けです」(同)

 サブスクを利用し、キックボクシングジムを継いだ30代男性いわく、

「会社員をやりながら副業で始めましたが、軌道に乗ったので脱サラし、今はジム経営に専念しています」

 一から起業した際にかかる時間を金で買う形となる、個人によるM&A。退職後のキャリアを模索する50~60代の利用者も多いという。

 関心を示す人は増えるか。

週刊新潮 2026年2月12日号掲載

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