実は広告業界に革命を起こしていた「落合信彦さん」出演「アサヒスーパードライ」CMの知られざる功績

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広告とは時代を映す鏡

 落合氏が1989年までCMキャラクターを務めた後、「この味が、世界のビールを変えようとしている」のコンセプトや、世界でベストセラーになっていることを示すような内容に変更。この時これまた芸能人ではなく、各業界で世界的に活躍する、渋い男性仕事人が抜擢され続けた。

 ロチェスター大学サイモンスクール准教授の住田潮氏やカーネギーメロン大学教授の冨田勝氏、イリノイ工科大学助教授の笠井和彦氏(肩書はいずれも当時)、コンポーザーの三枝成彰氏が登場。1990年代は落合氏の世界観を取り戻すかのように、ジャーナリズムの世界からは山際淳司氏や青島健太氏が登場し、海外で取材をこなす様子が描かれた。

 スーパードライは「辛口」「ドライ」「キレ」「世界を変える」といったメッセージを初期の頃は打ち出していた。挑戦者から王者になった後は「鮮度」や「このキレ味が料理をもっとウマくする」に加え、「最高の渇きに、ドライ」など、次々と新しい切り口を提示してきた。このようにスーパードライのアピールしたいポイントは時代によって変わっていくため、当然起用キャラや表現は時代とともに変わる。

 広告とは時代を映す鏡であり、国際ジャーナリストが世界を股にかけて仕事をする、といった状況は円安かつ一人当たりGDPが低い現在の日本では共感は得られまい。

 とはいっても、落合氏の訃報と共にスーパードライのCMは多くの人の心に蘇るとともに、CM界にもたらしたインパクトを私のような広告関係者もこうして書いてしまう。そして、今でもスーパードライは全般的に「男」のニオイがプンプンし、勢いのある音楽や映像テンポは維持されている。最後の外国人が低音ボイスで「アサヒスーパードッラーイ!」と締めるスタイルは落合氏時代と変わらない。

 それだけ落合氏のCMがブランドにとって重要だったことを改めて感じ、部外者ながら、松山社長の追悼メッセージには一言一句ウンウン、と頷くのであった。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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