「給食無償化」に賛成の人は「1食あたり260円」で充分と考える? 食材が高騰する中、専門家があえて“給食費値上げ”を説く理由

国内 政治

  • ブックマーク

予算はたったの260円

 教育現場における食育と給食の問題に詳しい武庫川女子大学教育学部の藤本勇二教授も、給食無償化に反対の立場だという。ちなみに藤本教授は文部科学省の「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」で委員を務めていた。

 まず藤本教授が問題視するのは、先に触れた3党合意の内容だという。特に「保護者の所得にかかわらず1人当たり月5200円を上限に支援する」という制度設計だ。

「5200円の支援で足りなければ差額分は保護者に負担を求めてもいい、という制度設計ではあるようです。しかし自治体に『5200円の予算で給食を作らなければ』というプレッシャーがかかることは想像に難くありません。月曜から金曜まで5日間、1カ月を4週と仮定すれば、5200円で20日分の給食を賄う必要があります。試しに5200円を20日で割ってみましょう。1日あたりの予算は260円になります。今、260円の予算で昼食を用意することは自炊でも厳しいでしょう。昨年8月には『給食のメニューが貧弱だ』との画像が拡散し、自治体に非難が殺到したことがありました。あの給食が本当に貧弱かどうかは議論が分かれましたが、給食無償化で実際に貧弱な給食が増える可能性は否定できません」

給食費の値上げが必要

「給食無償化」というネーミングはインパクトが強い。それだけに、藤本教授は改めて冷静に制度設計をチェックする必要があると指摘する。

「『給食費の無償化』には賛成でも、『給食費は1日260円で充分』と言われたら納得する保護者は少ないのではないでしょうか。私は今の小学校に求められているのは給食の“無償化”ではなく、むしろ給食費の“値上げ”だと思います。もちろん生活が楽ではない保護者が全国にたくさんおられるのは承知しています。それでも政府は国民に対し、『申し訳ありません、やはり育ち盛りの子供には質の高い給食を提供すべきです。保護者の皆さんが負担している給食費の値上げをお願いできませんでしょうか?』と協力を求めるのが正しい姿だと思うのです」

 第2回【「給食無償化」で日本人の美徳がアダに…「栄養教諭」は限られた予算に頭を抱え、「調理員」が厳しい待遇に耐え続ける“給食室の現実”】では、給食を調理している現場は低コストに悩まされているという現状や、給食無償化によって給食が“コンビニ弁当化”する懸念について詳しくお伝えする──。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。