浅野忠信、堺雅人、長澤まさみ、岡田准一、蒼井優…話題の俳優たちが人生と向き合う「雪と共に生きる人々の映画」5選【冬の映画案内】
なぜ山に登るのか
〇「エヴェレスト 神々の山嶺」(2016年)
原作は“映像化不可能な小説No.1”と言われた、夢枕獏のベストセラー。夢枕は作品を観て泣き、この物語を書いてよかったと語っている。
エヴェレストが聳えるカトマンズの街。山岳カメラマンの深町誠(岡田准一)は、消息を絶っていた天才クライマー・羽生丈二(阿部寛)に出会う。羽生は、エヴェレストを「冬季南西壁単独無酸素」で登頂することを目指していた。標高8848メートル、気温氷点下50度、最大風速は50メートル以上で、呼吸すら困難な極限の世界だ。この条件で成功した者はこれまで誰もいない。深町は羽生の登攀を撮るために同行することを決意する。
撮影地はエヴェレストの標高5200メートル地点だ。ドキュメンタリーさながらの映像は、10日間歩いて登ったその場所で、1週間かけて撮影された。峻険な氷壁、岩のような氷塊、そして不意をつく雪崩、まさしく雪の迷宮を彷徨い歩いているようだ。
岡田は日本で、ピッケルを持って氷壁を登る訓練をして臨んだ。しかし、撮影時に下から吹き上げた強風で、自分の身体が浮いた時には恐怖を感じたという。それでも「神秘的なものを感じながら、あの場所に立てたのは得難いことだった」と語っている(「キネマ旬報」2016年3月下旬号)。
劇中、シェルパが山に登る理由を「神に愛されているかを問うために、神々の山峯に行く」と語るシーンがある。岡田が感じた神秘的なものとは、この言葉にあるのかもしれない。
山小屋で下ろす心の荷物
〇「春を背負って」(2014年)
立山連峰の山子屋を舞台に、そこに集まる人びとの繋がりと再生を描くドラマ。長嶺亨(松山ケンイチ)は、金融トレーダーだ。ある日、山小屋を営む父(小林薫)が急死したと連絡が入る。帰郷すると、葬儀には山で父に助けられた高澤愛(蒼井優)がいた。亨は山小屋を継ぐ決心をする。やがて父の友人ゴロ(豊川悦司)が現れ、亨は愛と共に助けられながら新たな道に向き合う。
亨が山小屋を継いだのは、少年の頃、父と雪に埋もれてしまった山小屋を掘り起こした記憶が蘇ったからだ。撮影は立山連峰の最高峰、標高3015メートルの大汝山(おおなんじやま)で行われた。山小屋から見る雪の山々が雄大で美しい。そこで亨と母(檀ふみ)は、父の遺灰を撒く。
登山経験がある人は、誰もが山小屋のお世話になったはずだ。透が食材を背負って雪道を登るシーンがある。必要なものは、自分たちで運ばなければならないのだ。クライマックスは、病気のゴロを背負い亨が雪に覆われた斜面を下る場面だ。松山は事前に人を背負い雪山で練習をした。本番ではゴロを運び終えホッとして雪に倒れ込んだら、思わず涙が出たという(「キネマ旬報」2014年6月上旬号)。
登山者を迎える3人のアンサンブルがいい。ボーイッシュではち切れんばかりの笑顔の愛、いつも「なごり雪」を口ずさんでいる剽軽なゴロ。そして、この山小屋を皆に喜んでもらえるようにと考える亨。
愛がこの山に来た理由を初めて語るシーンがある。それを聞いたゴロがつぶやく。「愛ちゃんは、今自分が背負っている荷物の一つを下ろそうとしている」と。人々は失った何かを探しに山にくる。そして山小屋は心の避難所なのかもしれない。
[3/3ページ]



