みそカツ「矢場とん」の店員がプロ野球選手に! 楽天イーグルス「26歳のオールドルーキー」が高校から始めた野球でプロ入りを果たすまで

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仕事と野球の両立はしんどかった

「競技を続けるからには、プロを目指そう」

 さらなる高みを目指して、3シーズンにわたってプレーした矢場とんでは、午前中に練習を終えると、名古屋駅周辺の店舗に向かい、ホールスタッフの一員として接客にあたる多忙な毎日を過ごした。

「接客をする際は、とにかく他者の目を見ながら、はっきり話すことを心がけていました。家に帰ると足がパンパンに張っていて、野球との両立にしんどさを感じる時もありましたが、休みの日に温泉に出かけたりして、できる限りの身体のケアは欠かさないよう心がけていました」

 だが、多忙を極める中でも九谷投手はウエイトトレーニングに励み、ストレートは最速149キロに到達。2023年からチームのコーチに就任した鹿島忠氏(元中日)の指導により、「ストライクゾーンに投げ分けることを意識しながら、長年練習に取り組んでいた」というスライダーを習得するなど、九谷投手の潜在能力は徐々に花開いてゆくこととなる。

 この年に行われたクラブチーム日本一を決める全日本クラブ選手権では、チームを過去最高の準優勝に導く活躍を見せ、速球投手として日に日に存在感が増していく九谷投手に転機が訪れたのは、愛知県野球連盟会長杯が行われた2024年10月のことだった。

厳しさもレベルの高さも想像以上

 この大会で矢場とんは王子と対戦。九谷は社会人野球の強豪を相手に、7イニング制の大会で7回1失点の完投勝利をマーク。この好投が王子スカウトの目に留まり、翌年1月からは「当初は自分が一員としてプレーできることになろうとは全く予想できなかった」と話す王子への加入が決まる。

「さまざまな方から『厳しい』とは聞いていましたが、規律も練習も想像以上で……。チームに加わったばかりの頃は環境の違いに戸惑ったり、自信を持って投げたボールで空振りが取れずに、レベルの高さを感じたりすることも少なくありませんでした」

 社会人4年目を迎えた右腕の戸惑いを察した王子の湯浅貴博監督は、「焦る気持ちもあると思うけど、とにかくマイペースに……」と九谷投手に伝え、球数を少しずつ増やしながら調整を進めていった。

「打者との駆け引きを学び、153キロにまで球速を伸ばしたことや、速球やスライダー、チェンジアップを的確なコースに投げ分けられるようになったことが大きかったように思います」

 王子で過ごした1年間の成長をそう振り返る九谷投手だが、都市対抗野球出場6チームを決める東海地区2次予選(2025年6月)では一時3連敗。難敵が揃う中で苦戦を強いられ、チームは負ければ本戦の出場権を逃す厳しい状況に追い込まれた。

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