40歳・芸人の「チャーハン」動画が異例ヒット まさかの159万回再生…SNSで大ブレークしているワケ

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芸人特有の悲壮感なし

 しかし、彼には下積み時代の芸人特有の悲壮感がなかった。しゃべり方は落ち着いているし、服装もおしゃれで品がある。料理が上手いだけでなく、革靴の手入れや修理を自分でやるような器用な一面もある。そんな彼の慎ましくも上質な暮らしぶりは、芸人の中でも異彩を放っていた。

 ドンデコルテが「M-1」で披露した漫才は、まさに渡辺のそんなキャラクターを生かしたものだった。「厚生労働省の定めた基準によると貧困層に属します」という自己紹介で観客の心をつかみ、そこから演説口調で自分の情けないところを堂々と語ってみせた。

 2本の漫才とも「いかにしてつらい現実から目を背けるか」ということがテーマになっていた。あの漫才はただの「お笑い」ではなく、金はなくとも気高く生きる彼の心の叫びでもあった。だからこそ、あれだけ大きなインパクトを残したのだ。

 そんな渡辺の作るチャーハンは、ドンデコルテの漫才と同様に繊細かつ丁寧に作られていて、彼の人間性がそのままにじみ出ている。「銀次チャーハン」がこれだけ人気を博しているのは、「M-1」を通して多くの人が彼のキャラクターに魅了されたからなのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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