二枚目役者が三の線を… 適役続きの「37歳遅咲き俳優」が“イタイ優男”を熱演

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 二枚目の壁。誰もがうらやむ天賦の美しさは、時として邪魔になる。演じる役の幅がどうにも広がらない。どう崩すか、どう打ち破るか。三の線を演じる楽しさに目覚めた二枚目役者は必ず解放感に満ちた表情を見せる。昨年の竹内涼真に引き続き、放たれたのは中島歩だった。「俺たちバッドバーバーズ」で演じるのは、トンチキなルックスで、いまだに夢見がちな40歳の美容師・日暮歩(ひぐれあゆむ)。呼吸と間合いが既に喜劇役者。驚くほど楽しそうに演じている。黙って立ってりゃ彫像のように美しい中島が、喜々として「裏社会にうっかり巻き込まれていくイタイ優男」を見事に体現。眉目秀麗のビの字もない、微妙なダサさとイモっぽさ、憎めないお人よし感が大いに笑わせてくれるのだ。

 ここ最近の中島は適役&好演続き。「不適切にもほどがある!」(TBS系)での草食系ダサ教師役や「愛の、がっこう。」(フジ系)で演じた無責任男役が礎となったか。しかも今回は若手俳優が憧れる阪元裕吾監督作品だ。飛躍の年になる予感が。

 さて、この何も考えていないお気楽な日暮歩が仕事を求めて入ったのが月白(つきしろ)理容室。店主で理容師の月白司には裏の顔が。実は裏社会における便利屋=裏用師(りようし)として暗躍しているのだ。

 月白を演じるのは草川拓弥。ここ数年、深夜枠ドラマで姿を見ないクールはないと感じるほど多作品に出演。ドラマ界でいえば、桜井ユキ・朝加真由美・竹財輝之助と並ぶくらい多作の俳優である。阪元作品「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」にも出演、今回は怜悧&すご腕の裏用師として軽やかなアクションも見せている。主食はペヤング生卵つけ、たんぱく質は魚肉ソーセージ、野菜はポテチで、という超偏食な役どころ。母親や家族にトラウマがあるのか、心の闇も垣間見せる。ずば抜けた戦闘能力の持ち主だが、普通の人間の営みへの興味や常識が欠如していそうで不器用。なんだかこっちも憎めない。

 へっぽこなお人よし元美容師と、社会常識皆無のすご腕裏用師。このコンビ、なんとなく波長が合っていて新鮮。彼らに裏社会の依頼を回してくるのがブローカー・牛窪譲(うしくぼゆずる・後藤剛範)。他にもハッカーや殺し屋が登場するようなので、その化学反応が楽しみである。

 さて、阪元作品にはさらりと殺人を請け負う人材が豊富なのだが、今作では謎の男として高良健吾が登場。置き引きするやつを悪人扱いするも、自分は無表情で人を確実にあやめる。あめちゃんなめてると思ったら、その棒で頸動脈をプスッと刺すっつう。民放地上波連ドラで久々に見られるのが、ダークサイドコーラ(高良)で、ある意味安心したわ。

 へっぽこ日暮が働き始めた美容室が、実は若い女性客の髪(と命)を狙う店長(渡部 秀)の猟奇的犯罪集団と判明。日暮は月白に助けを求める。そこから月白理容室に住み込みで働く(要は借金返済)ことになったわけだ。

 裏稼業界隈のお仕事ドラマは、もともとテレ東の十八番だったはず。今作を機に、初心に返って、ニッチなノワールコメディーをとことん追求してほしいな。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年1月29日号掲載

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