阪神、日本ハムのお株を奪った“スカウティングと育成” 他球団のスカウトはドラフト会議で「やられた!」と嘆いた
自信がある証拠
ドラフト候補となる選手の試合には、当然多くのスカウトが視察に訪れているが、その中でも阪神の人数は、他球団と比べても多い印象を受ける。また、単独1位指名だった大山は注目されても自分のペースを崩さない精神的な強さ、外れ1位での指名となった森下も怪我や不調でも野球に取り組む姿勢が変わらないメンタリティーを球団が評価している。注目度の高い特殊なチームで活躍できる素養を重視したことが成功した一因といえる。
今オフには、国内FA(フリー・エージェント)権を取得し、去就が注目されていた近本が残留を表明するなど、今シーズンもセ・リーグの優勝候補筆頭になることは間違いない。
ただし、今後のことを考えると“懸念材料”は存在している。それが主力選手のメジャー移籍問題だ。主砲の佐藤は今シーズン終了後にポスティングシステムを利用したメジャー移籍を希望していると報じられている。エース格の才木浩人は一昨年の契約更改でメジャー移籍を直訴。さらに、昨シーズン50試合連続無失点を記録した中継ぎの柱である石井大智も契約更改の場で、近い将来のメジャー移籍の希望を伝えたと報道されている。
阪神からは2022年オフに藤浪晋太郎(現・DeNA)、2024年オフには青柳晃洋(現・ヤクルト)がポスティングシステムを利用して移籍したが、彼らと比べても佐藤、才木、石井の3人は戦力として重要な存在であり、そろって退団となれば大きな痛手である。しかし、そんな主力の流出危機についても、既に対策をとっているという見方がある。前出の他球団のスカウトはこう話す。
「昨年のドラフトで3球団が競合した立石正広(創価大)を引き当てたことが大きいですね。かなり前から1位指名を決めていたそうですが、これは佐藤のメジャー移籍を見越したことだと思います。さらに驚いたのは、2位でも立石と同じ右打ちの内野手である谷端将伍(日本大)を指名したことです。1位で競合するような野手を指名できたら、2位では投手と考えそうなものですが、そうしなかったのは野手の世代交代を見越してのことだと思います。逆に言えば、現在の若手投手とその育成に自信がある証拠でしょう。谷端を指名されて『やられた!』と思った球団が多かったのではないでしょうか」
阪神の黄金時代
立石は東京新大学野球で通算15本塁打を誇り、3年秋に出場した明治神宮大会では大会新記録となる10安打をマークした大学ナンバーワンスラッガーである。谷端もまた、全国で最もレベルの高い東都大学野球一部リーグで3年生の時に春秋連続で首位打者を獲得するなど、打撃力に定評がある。大学球界を代表する右打者が2人そろって加わったことは、チームの将来にとって大きなプラスだ。
投手についても、昨年は育成ドラフトで入団した早川太貴と工藤泰成が早くも支配下に昇格し、早川は一軍で先発として2勝をマーク。門別啓人、今朝丸裕喜という高卒選手も二軍で順調に結果を残している。才木と石井の後継者について、ある程度目途が立っていると言えそうだ。
このオフにもライバルである巨人が積極的にFAで実績のある選手や他球団の外国人選手を獲得する一方で、阪神は3人の新外国人選手と、日本ハムから伏見寅威をトレードで補強しただけにとどまっている。それも現有戦力とドラフトで獲得した選手の成長に自信があるからと言えるのではないだろうか。今シーズン以降も、日本ハムのお株を奪った「スカウティングと育成」の阪神が黄金時代を築く可能性が高そうだ。
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