「成金があやしい」「病院の先生が」…50年前の菊花賞で「馬券5000万円分を現金購入」した謎の男、夜の街に流れたウワサの数々
第1回【ボストンバッグに分厚い札束が…50年前の菊花賞で「馬券5000万円分を現金購入」した謎の男 競馬関係者が「素人」と推理した根拠とは】を読む
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競馬場にはドラマがある
ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」(TBS)のヒットで再び高まっている競馬人気。競馬場とはそもそも、驚きの出来事が実際に起きやすい場所でもある。1976年の秋に開催された「第37回菊花賞」(京都競馬場)をめぐっても、少し奇妙な出来事が報じられていた。舞台は福岡の小倉競馬場。そこにふらりと現れた謎の男性が、持参した現金5000万円で馬券5万枚を購入したのだ。
折しも当時は、かの有名な東京・府中の3億円事件が公訴時効を迎えた1年後。そこで「週刊新潮」は現地で詳細を追ったが、街を飛び交う流言飛語は2時間ドラマを思わせるような内容ばかり――。見事に“迷宮入り”したこの一件について、第2回は繁華街の“名探偵”たちによる大胆な推理をお伝えする。
(全2回の第2回:以下、「週刊新潮」1977年1月20日号「『馬券五千万円買ったのは誰』夜の『北九州』が噂するホシ」を再編集しました、文中の年齢、肩書き等は掲載当時のものです)
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「3億円事件? 考えすぎだよ」
(この記事は第2回です)
5000万円の男は何者だったのだろうか。小倉競馬場の場長、市谷重治さんは「さっぱりわからない」という。
「お客さんの人権、プライバシーを尊重しなければなりませんからねえ。住所・氏名をムリして聞くわけにもいきません。年格好は40年配で、中肉、身長が160センチちょっと。丸顔に眼鏡。ハンチング。グリーンの革ジャンパーにラクダ色のズボン姿。ボストンバッグの色は白……。言葉はまったくの標準語で丁寧。小倉競馬場は初めてといった感じではあったけれど、落ち着いた方で、自営業というふう……」
暴力団員などには見えなかったが、会社員にも見えなかったという。犯罪のにおいも感じなかったため、警察に連絡をしなかったが、数日後に別件で会った小倉南署の次長には伝えた。その次長の話。
「5000万円の札束の帯封が、ちゃんとした銀行のもので、ご本人もこれといって不審な様子がなかったというし、大金の盗難などの情報もなかったから、ことさらに調べはしなかった。3億円事件? 考えすぎだよ」
夜の街の“名探偵”たち
地元の人は北九州市をギャンブルの町ともいう。500万円当てた、1000万円もうけたといった話は、真偽のほどはともかく「ザラにある」そうだ。では、5000万円の男について、地元情報通の話を列挙してみよう。
「その男の話は、男が来たという当日に耳にした。馬主じゃないよ。馬が予想通り来ないということは、馬主こそ身にしみてわかってるからね。大阪の人間じゃないかという噂だ。恐らく、1億円ないと借金が払えないという人で、手元に5000万円だけあるという人が、イチかバチかでやったんじゃないかな。バカげた話ではあるが……」(九州馬主協会常務理事・小野宗明さん)
「あまり競馬を知らない相場師か、バクチ打ちじゃないですかな。金も、正当な手段で得たものとはとても思えない。これには絶対、犯罪が絡んでいると思う」(同・永田賢介さん)
「今日は大口で買った男がいたという話、その日に飲みにきた競馬場の職員から聞きましたよ。なにかドロ靴はいて、34、5歳で、風采のあまりパッとしない人だったそうですよ。大口というから、せいぜい4、500万円かと思ったら、5000万円だっていうから、バカなヤツがいるもんだと思いましたよ。まず、汗流して稼いだ金じゃないね。土地成金か何かだろう」(小倉の飲屋街にあるすし屋の店長)
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