使用済みの「おもちゃ」がベッドの上でウネウネと…「60歳からのハローワーク」を体験したライターの生々しいレポート

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――逆に、もっとも自分に向いていると思ったのは?

 宅配便の倉庫での荷分けと、ファストフードの店員の仕事は問題なくやれた気がしています。どちらも大手企業だったせいかもしれません。ある程度大きな会社は労働環境が整備されていて、そこに誰が働きに来ても機能するようになっていました。就業時間内目いっぱい。効率よく働けた実感があります。
 
 脳障害を持つ人たちのグループ・ホームで食事をつくる仕事もきちんとできた気がします。キッチンには基本的に刃物を置かないきまりがあり、炊飯器をはじめ電気での煮炊きや湯煎や解凍が主で、調理に慣れていない僕でも問題なくやれました。
 
 あくまでも体験のつもりだったのに、ホームの入居者の人が、初日からこちらに興味を持ってあれこれ話しかけてくれたり、また来てほしいように言ってくださったりしたのには、心が動かされ、感傷的な気持ちになりました。やはりどの仕事にしても、必要とされていると実感すると、やりがいは強く感じられますよね。

――これから実際に職探しをする同世代の人たちに何かアドバイスは?

 どんな業種・職種でも、躊躇せずにトライしてはいかがでしょう。実際にやってみないと、難易度や体力の消耗度はわかりませんから。たとえば清掃車に乗ってゴミを収集する仕事ですが、やる前はとても不安で、にわかで体力づくりをしたほどでした。

 でも、実際にやってみると、意外と頑張れました。おそらく、清掃車に乗り降りする動きは腰への負担が比較的少ないからでしょう。また、助手席に座っている移動で身体を休められます。それにゴミが少ない日や地域を担当すると、仕事は早く終わります。コスパがいいと思いました。実際ゴミ収集の求人は人気があって、求人があってもすぐに定員が埋まります。早い者勝ちです。やってみて、人気の理由がわかりました。

 実はこの仕事をする前には、職業差別を覚悟していました。登下校の子どもに「臭い!」と言われたり、狭い道に縦列駐車するので「じゃまだ!」と言われたり。でも杞憂でした。昼間のゴミ置き場で待つお年寄りには「毎日ご苦労様です」と言っていただきました。暑い日には冷たい飲み物をふるまってくれた家もありました。これらはやってみないと知ることができないことです。

 どんな仕事でも一度トライして、自分に向いていそうなら、やれそうならば続ける。厳しかったら無理せずに、別の業種・職種を探せばいいと思います。

神舘和典
1962(昭和37)年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経てライター。政治・経済からスポーツ、文学まで幅広いジャンルを取材し、経営者やアーティストを中心に数多くのインタビューを手がける。中でも音楽に強く、著書に『不道徳ロック講座』など。

デイリー新潮編集部

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