使用済みの「おもちゃ」がベッドの上でウネウネと…「60歳からのハローワーク」を体験したライターの生々しいレポート
――とはいえ、ゴミ、排泄物にかかわるような多くの人が避けるような仕事も積極的にやっていますよね。かなりの決心が必要だったのでは?
もちろんそれなりの覚悟が必要でしたが、言うまでもなく大切な仕事です。現場に入って感じるのは、携わっている人たちが真摯に仕事に向き合っているということでした。誰かがやらなければならない仕事だからやる、という使命感のようなものとも言えます。
それに、肉体労働系の仕事場には概して明るい雰囲気があります。おおらかな方が多く、失敗して叱られもしましたが、同じ過ちを繰り返さなければ、その後もずっと気持ちよく働かせてもらえました。
本にも書きましたが、排泄物やゴミよりも実は吐瀉物のほうが厄介です。「休憩アリ」のホテルの清掃員体験で知りました。
排泄物は比較的すぐに消臭できるようですが、吐瀉物の臭いのほうはなかなか消えません。女性を無理やり酔わせて連れ込む輩がいまだに多いため、嘔吐の問題がつきまとうのです。
――そのホテルで目撃した“衝撃シーン”の描写は生々しいですね。
ああ……、いわゆる大人向けの「オモチャ」が、お客さんが帰った後のベッドの上でウネウネと動いていた、というシーンですね。少し前まで使用されていたそれに消毒用のアルコールを噴霧して、きれいに拭くのが仕事でした。素手の作業ということもあり、慣れるまでに時間がかかりました。
でも時給が良くて、短時間勤務やWワークも可能だから、この職場は若い女性が多かったんですよね。いくら消毒してあるからといって、ほかのカップルが使用したばかりのオモチャを使うお客さんがたくさんいることは理解できませんでしたけれど。
今回体験した仕事の中では休憩アリのホテルとファストフード店は圧倒的に女性の多い職場でした。
――一番つらかった仕事はなんでしたか?
体験したなかでとくにつらかったのは栃木の山の歩荷(ぼっか)と沖縄のマンゴー畑の農作業です。
歩荷は、クルマの行かれない山小屋に食糧を運ぶ仕事です。荷は重いし、山道は険しい。小屋に着いたら食事の準備や洗濯や風呂掃除もやりました。きつかったです。自分の体力を過信していました。山に登るのは50年ぶり。息が切れ、めまいがしました。ただ、登山道では70代くらいのご夫婦もよく見かけたので、山に慣れた人なら、無理なくやれるのかもしれません。
この仕事のときは、クマが出没すると当日知って戦慄しました。幸い遭遇せずに山小屋に着いたものの、途中にとても新鮮なクマの排泄物があり、びっくり。一緒にやった“先輩歩荷”が「獣臭がするので警戒してください!」と警告してくれるのですが、警戒してもクマは出没します。
ただ、夜、山小屋の露天風呂から見上げる夜空の美しさは忘れられません。無数の星が輝き、まるで宇宙にいるようでした。
沖縄のマンゴー畑も甘く見ていました。夏の真っただ中、お盆の週だったので、空き時間に泳ごうと思ってワクワクして出かけていきましたが、そんな余裕はまったくありませんでした。
マンゴーって、ビニールハウスで育てるんですよ。なかは45度です。入るだけで、滝のように汗が流れてきます。まず雑草を抜くんですが、腰が痛くなりました。暑さでくらくらして、嘔吐しそうになりました。
小さかったり傷ついたりで商品にならないマンゴーを食べさせていただき、それは働いた後ということもあり、ものすごくおいしかったです。
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