日本アカデミー賞「国宝」「鬼滅」「チェンソーマン」邦画好調でも浮かれられない…業界にはびこる「売上アップのからくり」
メガヒットの裏に
コロナ禍直前の2019年に100億円超となったのが『天気の子』『アナと雪の女王2』『アラジン』『トイ・ストーリー4』の4作だ。邦画はオリジナル作品の『天気の子』だけで、あとは洋画のシリーズタイトルとリメイク。それに比して、2025年の上位はすべてシリーズものか原作ものだった。
興行収入だけ見ると、『天気の子』(2019)の公開週末3日間の成績16億円に対して、『鬼滅の刃~』(2025)のそれは約55億円……これは、「ヒットが見込める作品に対する劇場側の贔屓」が成績に反映されたものだといえる。
コロナ禍以前の映画館を思い出してほしい。誰がどうみても「当たるだろう」という期待作、ファンダムが形成されたビッグタイトルの公開時であっても、シネコンでは多様な作品が編成されていた。
だが、劇場にとって悪夢としかいえなかったコロナ禍から、その状況は激変。おこもり期間であっても動員したアニメのシリーズタイトルは、「映画業界の救世主」として大きく上映展開し、映画館におけるプライムタイム(週末の午後帯や平日の夜帯)は、ほぼ「年間ランキング上位につけた作品」がスクリーンの大半を占めるようになった。
その流れはポストコロナでも加速。当たる見込みのある作品に限って、シネコンのスクリーン数が多く割り当てられるよう編成されている。ちなみに公開本数自体はコロナ禍を挟んでも大きな変動はない。つまり、その分、メガヒットを見込まれる作品以外が、シネコンの片隅の小さなスクリーンで早朝やレイトショーでのみ上映されるなどの不遇な扱いを受けるようになったのだ。
これによって、ヒット見込みの作品については、公開初週からとんでもない額の成績をはじき出し、それがニュースで取り上げられ、さらに動員を伸ばす……という「ヒットの方程式」ができあがった。配給会社、大手シネコンが一体となってこの方程式でヒットを作り、メガヒットが生まれる。
「ヒット作」だけ優遇の現実
『国宝』はそもそも2K仕様で撮影された作品で、IMAX版はアップコンバートした、いわば「おまけ」バージョン。現在公開中の新作でIMAX上映が推奨される作品は『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』と『ウォーフェア 戦地最前線』だ。各地シネコンによって差があるものの、『アバター~』よりも『国宝』IMAX版の上映に多くの時間が割かれており、『ウォーフェア~』に至ってはX公式アカウントがIMAX上映決定をアナウンスしているものの、スケジュールはいまだ出ていない。
その理由は単純。表向きは、リピーターが多く動員が下落していない『国宝』の新たなる映像体験としてのIMAX版に劇場が注力したもの。だが、裏の理由は一般料金よりも高いIMAXスクリーンの収益を見込んでいるからだ。
IMAXスクリーンが驚異的映像体験を売りにする新作のためではなく、エキストラの収益を生む装置となった、といわれても仕方のない編成ではないだろうか。
映画にとって悪夢のコロナ禍を経ただけに、映画館に人が戻ったことは喜ばしく、好成績の作品が増えていることも素晴らしいことだ。
だがしかし、このヒット作優遇の流れによって、「本来であればもっと話題になってもいいはずの作品」が激増している事も忘れてはならない。
映画はジャンル、作家性などあらゆる面において多様であるべきだし、ましてや収益のために消費者が作品を観る機会を映画館が奪ってはならないからだ。





