「中居問題」で“第三者委員会”は役割を果たしたのか 古市憲寿は「勇み足で報告書を作ってしまった可能性」指摘

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 第三者委員会。流行語大賞にこそ選ばれないがよく聞くようになった言葉だ。企業や組織で不祥事が起きた際、組織から独立した外部の専門家で構成される調査チームのことである。

 2025年には、フジテレビの第三者委員会が注目を浴びた。中居正広さんに対して「性暴力による被害があった」と認定したのである。この点は中居さんサイドの弁護団からは、「『性暴力』という日本語から一般的に想起される性的行為の実態は確認されなかった」と反論があったが、第三者委員会は逃げるように対話を打ち切ってしまった。

 この問題に新しい動きがあったのは年末のこと。久保利(くぼり)英明弁護士が、フジテレビ第三者委員会に関しての意見を公表したのである。久保利弁護士は報告書を「とても残念」と厳しく批判する。「タレントを加害者にして、責任転嫁」するばかりで、本来の第三者委員会の役割を果たせていないというのだ。

 久保利弁護士の言葉は非常に重い。なぜなら彼こそが日本に第三者委員会を定着させた立役者だからだ。日弁連が策定している第三者委員会のガイドラインにおいても中心的役割を果たしていた。さらに第三者委員会がきちんと中立なのかを評価する「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長を務めている。

 実はこの格付け委員会には、フジテレビ第三者委員会の委員長だった竹内朗弁護士も名を連ねている。いわば同じ志を持った仲間だったはずだ。にもかかわらず久保利弁護士が竹内弁護士側を厳しく批判した。それほど竹内弁護士たちの作った報告書がずさんだったということだろう。

 第三者委員会というのは企業不祥事が起きた際に、有効な仕組みだと思う。社内調査だけでは隠蔽(いんぺい)が横行するかもしれない。だが昨今の第三者委員会は、参加する弁護士のビジネスとして利用されていないか。

 印象に残っているのは、竹内弁護士たちがわざわざ記者会見を開き、報告書を公表したこと。世間に注目された事件。名を上げて、スター弁護士になろうという野心はなかったか。勇み足で報告書を作ってしまった可能性はないか。

 久保利弁護士はこうも言う。「第三者委員会はそもそも捜査機関ではありません」。あくまでも目的は株主を含めた企業の再生。それなのに企業ガバナンスに対する調査と分析そっちのけで、中居さんにスポットライトを当てた。正義の味方気取りである。だが「捜査機関」としてはお粗末過ぎる、「週刊文春」の物語をなぞったような内容。委員会内では、パワハラ聴取による委員交代も起こっている。

 こうした事情を総合的に判断して久保利弁護士は意見を公表したのだろう。立場や年齢を考えると、私利私欲とは思えない。何せ81歳だ。恐らく竹内弁護士側は無視を決め込むのではないか。興味深く見守りたいのは、これからも竹内弁護士らに仕事を頼む企業があるのか、ということだ。全てが公平に、白日の下にさらされるといいと思う。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。他の著書に『誰の味方でもありません』『平成くん、さようなら』『絶対に挫折しない日本史』など。

週刊新潮 2026年1月22日号掲載

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