トランプ氏がグリーンランドを欲しがる“真の理由”とは EUからの警告を無視して米国が回帰する「NATO離脱論」

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米EU関係が急速に悪化

 1月20日、トランプ氏が2期目の米大統領に就任してから1年が経過した。前例のない行動を取り続けてきたトランプ氏だが、デンマーク自治領グリーンランドの領有に向けた動きほど、国際社会を驚かせるものはなかっただろう。

 トランプ氏は17日、米国のグリーンランド買収に反対するデンマークなど欧州8カ国に対し、2月から10%の関税を課すと表明した。グリーンランドに部隊派遣を決めた欧州8カ国が「危険なゲーム」に興じていると述べ、関税はグリーンランドを取得できるまで続くとした。

 これに対し、欧州側は猛反発している。フィナンシャル・タイムズは18日、欧州連合(EU)は米国に対し930億ユーロ(約17兆円)相当の関税を課すなどの対抗措置を提示し、トランプ氏に撤回を求める構えだと報じた。

 欧州議会は米・EU間の貿易協定の承認を拒否する構えをみせており、グリーンランド領有を巡って、米・EU関係は急速に悪化している感がある。

 市場も一連の動きに敏感に反応している。

 19日の欧州株式市場は大幅安となり、通貨ユーロにも売りの兆しが出ている。格付け企業フィッチ・レーティングスは、NATOが分裂した場合、欧州加盟国の信用格付けは1段階引き下げられる可能性があるとの認識を示した。

3月の訪問も検討中

 経済への影響以上に心配なのは、欧州に対する米国の不信感の高まりだ。

 ベッセント米財務長官は18日、欧州が弱いため、米国がグリーンランドを管理する必要があるとの見解を示した。公式の場で同盟国の能力を疑問視する発言をするのは異例のことだと言わざるを得ない。

 だが、米国の主張は根拠薄弱だ。トランプ氏は、米国が行動しなければロシアと中国によって支配されると主張するが、デンマーク軍のアンダーセン北極司令官は16日、グリーンランド周辺海域で中国軍やロシア軍の艦船は確認されていないと述べた。

 一方、米国はグリーンランドでの地歩を固めている。

 第2次世界大戦以来、グリーンランド北西端のピトゥフィク宇宙軍基地には、100人以上の米兵が長く駐留している。デンマークとの協定に基づき、米国は自らの判断でグリーンランドに部隊を派遣できる権限も有している。

 グリーンランドの領有に対する米国民の支持率は低い。だが、トランプ氏は3月にグリーンランド訪問を検討するなど前向きな姿勢を崩していない。

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