返し終わるのは80歳… 目が回る「50年住宅ローン」が広まったワケ 専門家はリスクを指摘

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35年ローンでは買えない

〈人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり〉。織田信長がそう謡ったのは、桶狭間の戦いの前夜だった。ところが、今は夢幻どころか50年間の住宅ローンが現実になっている。実際、ネットで検索すると、各行のプランがずらりと出てくることからも分かるように個人向けの超長期ローンは珍しくない。

 住宅金融支援機構の調査(2025年4月)によると、35年超~50年以内の長期ローンを組んだ利用者は、全体の25.5%。また、インターネット銀行のデータでは、30代で35年超~50年の住宅ローンを選択する割合は5割、20代だと7割にも達しているという。

 住宅評論家の櫻井幸雄氏が説明する。

「50年ローンは目新しいものではなく、2000年代から“親子リレーローン”などという形で存在していました。しかし、一般的な長期の住宅ローンは『フラット35』で知られているように35年間というのが常識だったのです」

 50年ローンが広まったのは、ここ2~3年のこと。多いのは夫婦で返済していくペアローンだ。

「大きな理由としては、やはり不動産の値上がりです。ご存じのように東京23区の新築マンションの平均価格が1億3000万円を突破し、35年ローンでは買えなくなっている。そこで、40年ローンが登場し、ついに50年となったわけです。最近は貸す側も“毎月の返済額が少なくなる”と、長めのローンにお客さんを誘導しているほどです」(同)

10年住んで売却

 しかし、である。仮に30歳でローンを組んだとしたら返し終わるのは80歳。男性だと平均寿命は81歳だから、一生ローンに追い回されることになる。考えただけでも目が回るような借金人生ではないか。

「ところが、この50年ローンは、借りる側も最後までは返済するつもりがない場合が多いのです。なぜなら、マンションが値上がりすると考えているから。都心のマンションは中古も値上がりしており、10年ほど住んだところで売却すれば、借金が大幅に減るか帳消しになるというもくろみです。デベロッパーも、こうしたトークでお客さんにタワマンを勧めるのです」(櫻井氏)

 リスクは? もちろんある。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言うのだ。

「わが国の住宅ローン市場では変動金利が全体の8割を占めます。しかし、ご存じのように金利は上昇傾向にある。50年ローンを組むのなら、常に繰り上げ返済を意識するべきです」

 半世紀先を正確に予測できる人はいない。マンション価格もずっと高値だとは無論限らない。

週刊新潮 2026年1月15日号掲載

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