あまりに不可解な「ボブスレー」ミラノ五輪消滅…“連盟のミス”で片づけてよい問題なのか

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 1月13日、「ボブスレーの日本代表が、ミラノ・コルティナ五輪に出場できなくなった」というショッキングなニュースが報じられた。報道を一見すると「連盟の不手際」という結論で片づけられそうな話だが、私にはどうしてもそうは思えないのだ。【取材・文=小林信也(作家・スポーツライター)】

選手が可哀想とは思えない

 朝日新聞はこう報じている。

<日本は3大会ぶりの出場をめざしていたが、日本連盟が五輪出場枠の獲得条件を誤って解釈していたという。
 前回の2022年北京五輪まで、ボブスレー男子の2人乗り、4人乗りは、種目ごとの世界ランキングで出場枠が決まっていた。
 ただ、24年に国際ボブスレー・スケルトン連盟がルールを変更。今回の五輪に向けては、2人乗りでめざす場合でも、決められた国際大会に4人乗りで出場しておかなければならなかったという。
 日本連盟が変更点の解釈を正しくできていなかったため、今季の国際大会派遣は2人乗りに絞り、4人乗りは見送っていた。>

 ルール変更を決めた24年の国際会議に日本連盟の代表は参加していなかったという。

 いずれにせよ、この報道をきっかけに、ほとんどのメディアとニュースに触れた人たちの反応は、「連盟は何をやっているんだ!」の批判一色。問題はすべて、ごく基本的なルール確認もせず、重大なミスを犯した連盟の責任を追及している。五輪への道を断たれた「選手が可哀想」という論調だ。日本経済新聞はこう書いている。

<今月初めに他国から指摘を受けて判明した。日本連盟の担当者は13日、東京都内で会見し「ダブルチェック機能が働いていなかった。申し訳ない」と謝罪。ミスの報告を受けた選手は「意気消沈していた」という。国際ボブスレー・スケルトン連盟に救済措置を求めたものの、認められなかった。取材に応じた選手は「ここまでの努力は何の意味もなかったんだと思った。涙が止まらなかった」と語った。

 ミラノ・コルティナ五輪男子2人乗りは28組が出場し、同じ各国・地域からは最大3組。出場枠争いとは関係ないが、国際連盟の2人乗りのランキングで日本勢トップは36位となっている。>

 だが私は一概に「選手が可哀想」とは思えない。むしろ「選手は何をやっていたのだ」と感じる。私もかつてマイナーと呼ばれる競技で世界選手権に出場し、自ら国際大会に遠征していた。競技団体には自分以上に競技に情熱を持っている人、海外とのネットワークを持っている人はいなかった。ルールの変更などは自分で調べ、必要があれば協会に要請するなどした。選手として当然のことだ。なぜボブスレーの選手はそれをしなかったのか。

国際連盟のランキングで36位という現実を棚上げ

 日本代表選手たちはヨーロッパやアメリカに遠征している。そこで海外選手たちと親密な交流をしていなかったのだろうか。日常的に情報交換する仲間がいたなら、今回のようなルール変更が話題になり、もっと早く認識できても不思議はない。

 メディアの報じ方にも疑問を覚える。まるで今回のことで出場が泡と消えたように伝えている。確かに決定打となったのは事実だが、国際連盟のランキングで36位という現実がある。これを棚上げして連盟だけを批判するのにも首を傾げる。

 もちろん、競技団体に責任がないと言うつもりはない。調べてみると、いろいろ不可解なことがある。日本代表は男子5名、女子1名、計6名が名簿に載っている。うち3名が、冬季五輪で多くのメダリストを輩出している実業団チームの所属だ。しかもその企業の代表取締役会長兼社長が、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の代表理事会長を務めている。代表3名が所属し、連盟の会長も務める企業がなぜ基本的な情報収集を怠っていたのか。その程度の情熱しかなかったのか。

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