“覚醒剤”の錠剤に「アニメやゲームのキャラクター」が刻まれるのはナゼか…元マトリ部長が明かす「海外では幼い子どもが誤飲する事件も」

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アヘンも押収されたそうだが、「アヘン戦争」のアヘンなのか

 その通り、アヘン戦争の“アヘン”だ。世界で最も古い医薬品であり、伝統的な乱用薬物でもある。国連の麻薬関連の条約は、そもそも1904年に建議した“上海国際阿片(アヘン)会議”をルーツにしている。つまりアヘンによって国際条約まで生まれたことになる。当時から、医薬品として必要性と同時に、危険性が際立っていたということだろう。

 一般にソムニフェルム種というケシのさく果(坊主)からアヘンは採取される。アヘンアルカロイドという成分を含有しており、モルヒネやコデインはその一つだ。重要なのは、モルヒネもコデインも医療に欠かせない物質である、ということだ。

 筆者は40年間ほどマトリで薬物捜査に従事した。常に最前線にいたつもりだ。しかし、これほど大量のアヘンを国内で見たことはない。報道写真を見る限り、押収されたアヘンは1袋10~20gに小分けされているとの印象を受ける。つまり、業販(卸)用だろう。では一体、どんな小売業者が買っていたのか。日本にアヘンのマーケットはないはずである。

 一方で、筆者が現役時代に検挙したイラン人のなかには、アヘンの吸煙(opium smoking/法律では吸食)者がけっこういた。ということは、卸先は外国人グループでないかと推察してしまう。まさかアヘンからモルヒネを抽出していたわけではないだろうが、彼らならやりかねない。この辺は徹底した情報収集が必要だろう。

今回逮捕されたイラン人は、以前から日本で稼働しているメンバーなのか

 筆者は「違う」と思っている。裁判を傍聴しなければ詳細は分からないが、偽造旅券等で不法入国したIDTOsのメンバーと考えられる。もちろん、日本にいるかつての残党をはじめ、他のアジア系の外国人がこれに加わった組織構成だと思うが……。さらに、逮捕された3人の上部に「黒幕」、つまりボス達が存在するとのではないかと筆者は考えている。それが組織というものだ。

 摘発された“新イラン人組織”はみなさんにどう見えただろうか。旧イラン人グループの大半は「何でもいいから稼ぎたい。儲けて帰りたい」というのが原点で、ある意味、動機や構図が分かりやすかった。しかし今回は違う。プロフェッショナルな犯罪組織として、この国に侵入してきたとの印象を受ける。

 昨年12月の臨時国会で、野党の某議員が「日本国内の何億円という不動産が、外国人に現金で購入されている。そんな現金がどうして持ち込めるのか?」と質問していた。的を射た質問だと思った。

 しかし、これは正規の経済の話である。裏経済では、すでに日本人を食い物にする犯罪組織まで生まれているのだ。

「やつらやっぱスゲーな。あの頃は渋谷でパケ売りしてたのによ。シャブ40キロにアヘン? ヤードで錠剤まで作っていたんだって。もう日本の不良じゃかなわねえな。この国は表も裏も外国人に乗っ取られるぞ。おまえ、ちゃんとしろ」

 この事件を受けて、懐かしい元ヤクザが電話してきた。筆者が現役時代に攻防を繰り広げた男だ。「おまえに言われる筋合いはない」と一蹴したものの、思わず頷いてしまった。

 第1回【“シャブ玉”5万錠に“アヘン”10キロ…「イラン人グループ」が違法薬物を“大量密造”の衝撃 「上野公園で変造テレカを売っていたイラン人とは比べ物にならない」】では、変貌を遂げた新たなイラン人グループが起こした大型密造・密売事件について詳報している。

瀬戸晴海(せと はるうみ)
元厚生労働省麻薬取締部部長。1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒。80年に厚生省麻薬取締官事務所(当時)に採用。九州部長などを歴任し、2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任。18年3月に退官。現在は、国際麻薬情報フォーラムで薬物問題の調査研究に従事している。著書に『マトリ 厚生労働省麻薬取締官』、『スマホで薬物を買う子どもたち』(ともに新潮新書)、『ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図』(講談社+α新書)など。

デイリー新潮編集部

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