ラノベの“ジャケ買い”は本当にあるか? 「“イラストレーターガチャ”は売れ行きに影響する」との声も
小説を読まない人にもラノベは売れる
また、“小説を読まない人にもラノベが売れている”こともわかった。先輩の家に遊びに行ったら、部屋にライトノベルがずらっと並んでいたのだが、聞けば「活字が苦手なので、中身はまったく読んだことがない」と言う。彼はかわいい女の子のイラストが好きで、「ライトノベルを画集のように集めている」と言っていた。
そういうニーズを聞き、すぐに売り場に反映した。七瀬氏が「電撃G’sマガジン」という美少女ゲーム雑誌で表紙を描き始めると、「気象精霊記」をその横に置き、イラストレーターつながりで買ってもらえるように工夫したのである。他のライトノベルに関しても同じように売り場を作ると、やはり本が売れていった。
著者やイラストレーターを関連づけて売り場を作る手法は、今ではどこの書店でもやっているし、そんなの当たり前のことじゃないかと言われるかもしれない。しかし、90年代当時、少なくとも筆者の田舎にある書店は本の並べ方にセンスがなく、取次が配本してきた本をそのまま出版社別や著者名であいうえお順に並べている店も多かったのである。
イラストの力を過小評価している?
筆者が通っていた書店も、富士見ファンタジア文庫や角川スニーカー文庫のライトノベルと、新潮文庫の芥川龍之介や夏目漱石の本を混在させて本棚に並べている有様だった。もっとも、当時はそれが普通だったし、それでもよかったのかもしれない。漫画や雑誌が主力商品だった時代で、書店は定期購読で稼いでいたためである。
筆者の経験からの憶測だが、当時、ライトノベルのイラストの重要性を認識していた書店員は、ほとんどいなかったのではないだろうか。それは出版社の編集者も同じだろう。人気イラストレーターを起用したライトノベルはあるにはあったが、売り上げを左右する要素になると考えていた人は、少なかったと思われる。
ところで、筆者にとって思い出深い『気象精霊記』だが、編集者を発端にしたトラブルがあったといい、富士見ファンタジア文庫からの刊行が中断されてしまったのが残念である(現在は著者の清水文化氏が、自費出版という形でkindleで販売している)。また、出版関係者と話をしていると、ライトノベルの小説家とイラストレーターが対立し、「重版したらイラストに対しても印税を出してほしい」と水面下で揉めた例がいくつもあると聞く。
ライトノベルに限ったことではないが、出版界の慣例ではあくまでも表紙周りは装丁としての仕事であり、イラストも買い取りが基本だ。重版すると小説家には印税が入るものの、イラストレーターには入らないのが原則である(一部例外はあるようだが)。このシステムはイラストレーターにとって不利な面が少なくない。今後、何らかの機会に再検討すべきだと思われる。





