「バス旅」が新たな代名詞に…徳光和夫が“泣きの徳さん”の次に編み出した“お約束”の強み

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「こっちに来て一緒に食べませんか?」

 バス旅の楽しみは食べることと買い物。この同行取材の時はこうだった。

 久留里の中華屋でまずチャーハン、肉野菜炒めを食べ、途中の酒屋で日本酒を買って田中、森尾にプレゼント。誕生寺では、鯛せんべいを買ってポリポリ食べ歩き。うれしかったのが、鯛の浦で立ち寄った店での食事だった。

 我々はカメラクルーの邪魔にならないように追いかけながら、カメラが回っていない時などに徳さんに話を聞いたり、撮影したりしていた。ただ、鯛の浦では撮影終了ということもあって、お土産店兼居酒屋の商店に立ち寄り、食事タイムに。

 徳さん、律っちゃんもリラックスし、最後に徳さんがこう話しかけてくれた。

「記者さんもお疲れでしょうし、お腹もすいたでしょう。こっちに来て一緒に食べませんか?」

 目の前のテーブルにはイサキの刺身、貝や伊勢海老入りのさんが焼などが並んでいた。遠慮なく、一杯やっている徳さんと直箸でさんが焼をつっついたが、誰に対しても気さくで気取らない徳さんに接し、この番組の人気の秘密が理解できたような気がした。

 当時はレギュラーで放送され、収録中に出会った中高年の男女に「毎週、番組を見ているよ」と声をかけられていた。また、湘南からやってきた若いグループが車の中でたまたまテレビを見ていたら、映っていたのが「寄り道の旅」で、ふと横を見て徳さん一行が歩いているのを目にし、驚きつつ、「ヨォ!」と親しげに声をかける光景にも出くわした。

 そんな飾らず、アットホームな雰囲気が、旅は道づれのその土地の人々もスタッフも、さらには我々も巻き込み、視聴者が寛ぐことができる時間を生み出している。すべてを演出しているのが徳光和夫といっても大げさではないだろう。

「路線バスは徒然なる旅」

 有名人と同行する機会は何度かあったが、徳さんの人気は芸能リポーターの梨元勝と似ている。梨元もどこにいっても、誰彼となく「梨元さ~ん」と呼び止められ、歓迎されていた。

 徳さんはこんな名言も残している。

「時間の制限を作らず、あまり計画も立てずに出かけてみる。吉田兼好法師みたいな感じ。路線バスの旅は徒然なる旅です」

 そして、居眠りしながらも「番組ではよくしゃべります。僕は口先だけで生きている人間」とうそぶいてバス旅を楽しんでいる。路線バスのネタは夫婦の会話のキッカケにもなっているそうだ。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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