ハリウッドスターや有名作家…著名人をも魅了した「八千草薫」 年を重ねても変わらなかった「清楚な美しさ」【昭和女優ものがたり】
「心の美しさが顔に表れていた」
八千草は1973年の「人気タレントランキング」(ビデオリサーチ)で女性1位だった(男性は渥美清)。10年後の1983年でも2位(1位は大原麗子)となる。これほど長い間人気が続く人も珍しいだろう。若い時は「お嫁さんにしたいNo.1」だったが、年を重ねるにつれ、多くの人の心を掴む女優となったのだ。
著名人でも八千草ファンを自認する人は多い。漫画家の松本零士は、八千草の写真を学生証の裏に入れて上京し、「銀河鉄道999」のメーテルはその写真を参考にしたと言っている(「スポーツニッポン」2919年10月29日)。英文学者・演劇評論家の小田島雄志は、八千草が結婚した時に「僕は新宿西口で焼酎を飲みながら泣いた記憶がある」という(「学士会館講演会」2005年1月17日)。
また、作家の長部日出雄は、念願がなった八千草との対談で、弘前高校生の時に映画館で初めて映画を観て以来のファンだと告げている(「オール讀物」2012年1月号)。それ以外にも、五木寛之、寺山修司、石坂浩二など多くの支持者に愛された。
八千草と多くの仕事をしてきた脚本家の倉本聰は、八千草の最後の出演「やすらぎの刻~道」(2019~2020年 テレビ朝日)でも脚本を書いた。八千草の亡くなった時にこう言っている。「あの美しさは、ただ表面的な顔の美しさではありません。心の美しさが顔に表れていた」と(『共同』2019年10月28日)。
美しさの頂点となる作品
最後に八千草の美しさが内面から滲み出ている映画を紹介しよう。「美しさと哀しみと」(1965年)は、八千草が『対談集 銀幕の大スターたちの微笑』の中で監督ベスト6に入れている篠田正浩監督の作品だ。
画家の上野音子(八千草薫)は、妻子ある作家・大木(山村聰)の子供を死産し自殺を図った過去がある。大木はそのことを小説にして、ベストセラー作家になった。20年後、大木は京都にいる音子に会いに行った。そこで音子の弟子・坂見けい子(加賀まりこ)に出会う。音子に愛情を抱いているけい子は、復讐のために大木に抱かれるのだった。
加賀の奔放な演技が話題になったが、八千草の、心に傷を負いながら生きようとする姿が儚くせつない。そして、際立って美しい。配信でも鑑賞できるので、是非ご覧いただきたい。
膵臓がんなどで闘病していた八千草は、2019年10月24日に亡くなった。88歳だった。
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