“ホテル密会”に“学歴詐称”でも出直し選挙に出馬する「女性市長」……“潔い引き際”よりも“堂々と反論して辞職しない”が支持される時代とは

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 女性市長が既婚男性の市職員と、ホテルで二人きりの“面会”を繰り返したことは是か非か──。こんな問題が争点となる首長選挙など日本政治史上、類を見ないだろう。前代未聞の選挙と呼ばれる所以だ。群馬県の前橋市長選挙は1月5日に告示され、“ホテル密会問題”で辞職した小川晶氏(43)も出直し市長選に立候補した。他に元市議や弁護士など4人が出馬しており、1月12日に投開票が行われる。(全2回の第1回)

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 小川氏は4日、自身のXに《私の行動により、ご心配をおかけしてきたことを、あらためてお詫びいたします》と謝罪。さらに翌5日の第一声では「前橋のため自分自身の人生をかけて働いていくという覚悟も誰にも負けない」などと訴えた。

 出直し市長選に挑戦する小川氏の姿と、静岡県伊東市の前市長・田久保眞紀氏(55)の姿が重なって見える人も多いのではないだろうか。担当記者が言う。

「田久保氏は東洋大学を除籍されていたにもかかわらず、市の広報誌に法学部卒と記載しました。これを百条委員会が学歴詐称と認定したため、市議会は昨年9月に地方自治法違反容疑で刑事告発すると共に不信任案を可決。田久保氏は市政の舵取りを後進に譲るかと思いきや市議会を解散し、さらに出直し市長選を選択したのです。選挙には田久保氏を含む9人が立候補し、12月に投開票が行われると田久保氏は3位で落選しました」

 小川氏や田久保氏の政治姿勢が今でも国民的な議論を巻き起こしているのは、彼女たちが市長の地位にしがみついたかのような印象を与えたからだろう。

 少なくとも昭和までなら、日本社会には「リーダーの出処進退は潔くあるべき」という不文律が存在した。

 そもそも中国の伝説的な「三皇五帝」は有徳の人物に帝位を譲ったとされ、これは「禅譲」と呼ばれてリーダー交替の理想型とされた。その精神は「立つ鳥跡を濁さず」という諺にも受け継がれている。

切腹とリーダーシップ

 ところが最近のリーダーはスキャンダルが浮上すると、自らの非を認めて辞任するどころか、むしろ権力の座に執着するようになっている──こう指摘し、“辞めないリーダー”を批判する意見はSNSでも非常に多い。

 デイリー新潮も2025年9月に「田久保市長、斎藤知事、石破首相…『潔く辞めないトップ』が増えているのはナゼか 変化する日本人の『引き際の美学』に迫る」との記事を配信した。

 社会心理学者の碓井真史・新潟青陵大学大学院教授に“日本型リーダーシップの変質”について取材を依頼すると、「日本人の出処進退に関する“美学”を考える際、武士の切腹が私たちに与えた影響は極めて大きいのではないでしょうか」との答えが返ってきた。

「切腹とは伝統的な作法に従い、自ら命を絶つことで責任を取るというものです。ここで注目すべきなのは切腹が刑罰ではなく、むしろ名誉だと考えられてきたことです。切腹を申しつけられ、それを粛々と受け入れる武士の姿を、日本人は『非常に潔くて素晴らしい』、『まるで桜の花のように散り際が美しい』と積極的に評価してきました」

 切腹を賞賛する文化は武士階級だけに留まらなかった。例えば赤穂事件を描いた「仮名手本忠臣蔵」が人形浄瑠璃で初演されたのは江戸時代の1748年であり、庶民はこれを熱狂的に支持した。

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