明日発生するかもしれない「巨大地震」 対応できない日本の財政の危うさに気づくべき

国内 社会

  • ブックマーク

国の借金が多すぎて巨大地震に対処できない

 そんななか、高市早苗総理は「責任ある積極財政」を掲げ、まず12月16日、2025年補正予算を成立させた。規模は18兆3034億円で、そのうち11兆6960円は国債の発行で賄うという内容だった。ちなみに、政府が使途を柔軟に決められる予備費、つまり自然災害やクマ被害などに備える予算は7098億円とされた。近未来、いや明日起きてもおかしくない巨大地震による被害想定額にくらべ、あまりに小さい。一方、借金はさらに積み上がってしまった。

 12月26日に政府が閣議決定した2026年度予算案をみると、巨大地震への対処はさらに困難になると思わざるをえない。122兆3092億円という一般会計の総額は、25年度予算を7兆円以上も上回る過去最高。税収も過去最高の83兆7000億円を見込んでいるが、歳出の伸びには到底追いつかず、前年を3.3%上回る29兆5840億円もの国債をあらたに発行するという。

 財政の健全化から遠のいたのは明らかで、そのことは一般に、将来の世代へツケを回すことになる、と説明される。それもたしかだが、同時に、明日発生するかもしれない巨大地震に対処する余裕が、さらに失われているということでもある。

 すでに「責任ある積極財政」は、金融および為替市場から大いに警戒されている。25年度補正予算の成立後、日本国債が売られて長期金利が急上昇し、円安が進んだのは、市場からの警告である。

 それも当然で、政府の債務のGDP比は、25年度の見通しで230%になる。インフレによって名目GDPが増えている分、一時よりは下がったとはいえ、G7のなかで日本の次に債務が多いイタリアでも136%で、日本がかかえる借金がいかに突出して多いかがわかる。元来、災害が多い国ほど借金は少なくしておかなければならないはずだろう。

イソップ童話のキリギリスへ一直線

 こんな状況では、市場から標的にされても当然である。結果としての長期金利の上昇を受け、国債の償還費はますます増える。そうした諸々が、いざ巨大地震が発生したとき、日本が手も足も出ない状態になることにつながっている。

 26年度予算案では防衛費は9兆円を超えている。しかし、日本ほどの災害大国にとっては、防災予算および地震が発生したときに対処するための予算も、国土と国民を守るために必要な「防衛費」であることを、高市総理は認識すべきではないだろうか。

 現在、物価の高騰や、円安の恩恵を受けた企業の好業績などにより、幸いなことに税収は増加している。それによって巨大地震に対処できるようにすることが、目下、求められているはずである。ところが、それを訴えるべき野党もこぞって、税収が増えた分は減税するように政府に迫っている。

 しかし、それではイソップ童話の「アリとキリギリス」におけるキリギリスへ一直線ではないか。日本に必要なのは、大地震に備えてアリになることではないのか。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。