「男か女か」ではなく「誰か」…「雅子さま」が苦しまれた“お世継ぎ問題”の重圧 皇位継承をめぐる本質的な問題とは

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 20年を超えるご闘病から、復調傾向が著しい皇后雅子さま。発病の大きな原因とされた“お世継ぎ問題”は、時代が大きく移り変わる中で、完全に次のフェーズに入ったといえる。日本の合計特殊出生率は2024年、1.15と戦後最低を記録した。227の国と地域の中で212位と、世界的にも極めて低い。宮内庁関係者は「1500年以上続き、日本の歴史そのものでもある皇室の未来を考えるにあたって、男女の別を議論すること自体が今やナンセンスなのではないでしょうか」と指摘。女性天皇の是非ではなく、“誰が天皇にふさわしいのか”を考えるべき局面を迎えているとの見方も一部で出始めている。

流産を乗り越えられて

「出産は奇跡だ。小さな命が生まれること。それは当たり前のことじゃない」

 同名漫画を原作に、2015年と17年に2つのシリーズがTBS系で放送された連続ドラマ「コウノドリ」(TBS系)で何度となく流れたナレーションの一節だ。ドラマでは俳優の綾野剛さんが主役の産科医を演じ、妊娠22週から出生後7日未満の周産期における妊婦や家族、医療関係者の葛藤と喜怒哀楽を描いて、平均視聴率11%超を記録。サブスクの普及などで2桁の視聴率が難しくなる中でも好評を博した。

 ここで、雅子さまのご出産を巡るお世継ぎ問題を簡単に振り返る。

 外交官の卵だった雅子さまは1993年に外務省を退職し、皇太子妃(当時)となられた。1月の皇室会議でご結婚が正式に決まった際、団藤重光・元宮内庁参与がマスコミに「気がかりな問題」として「お世継ぎのこと」と触れた寄稿に象徴されるように、当時は「お妃問題」イコール「お世継ぎ問題」でもあった。

 お世継ぎとは、もちろん天皇家の長男のことだった。ご結婚から6年が過ぎても懐妊の兆しはなかったが、99年12月3~7日の日程でベルギー皇太子の結婚式に出席された直後の同30日、宮内庁は雅子さまの稽留流産を発表。流産は早すぎた新聞報道による精神的ショックなど、さまざまな誘因が指摘されたが、その中に「海外志向が強い雅子さまの訪欧強行が原因」とする心無い批判もあった。

 愛子さまのご誕生から1年半後の2003年6月、湯浅利夫宮内庁長官(当時)が「やはりもう一人ほしい」と発言。多くの人々は暗に「女児では意味がない」という意図と受け止めた。雅子さまの発病はその半年後だ。以来、病気療養を続けられている。

 ドラマ「コウノドリ」では、妊婦が次の妊娠への不安や、やり場のない気持ちに陥ってしまうという視点から流産を取り上げた回があった。流産を「自分のせいだ」と思い悩む妻が「それでも子供が欲しい」と不妊治療を続けるが、検査で妊娠していないと分かると「少しほっとしてる自分がいる」と涙する。夫はその横で「何もしてあげられなくてごめん」と苦しむ……。当時、番組ホームページの投稿欄には、流産を経験した女性から「妊娠することも命の誕生も奇跡なんだと思います」とのメッセージが寄せられていた。

 雅子さまは、母となって初めての記者会見で涙ぐみながら「本当に生まれてきてありがとう、という気持ちでいっぱいになりました」と心境を語られている。雅子さまが稽留流産を経験されたのは1999年。不妊治療の第一人者だった堤治・東大医学部教授(当時)が、宮内庁病院の非常勤医に就任したことで始まった不妊治療中のことだったとされる。

ナンセンスな制度

 宮内庁OBはこう振り返る。

「『コウノドリ』というドラマは私も見ていましたが、やはり『もう一人ほしい』とおっしゃった湯浅さんの発言は、デリカシーがなかったなと思いました。天皇陛下が皇太子だった頃、意を決して行われた人格否定発言も、随分と批判はされましたが、まさに雅子さまを皇統の問題に巻き込んだことへの贖罪の想いからだったのではないでしょうか」

 皇室医療に関わった経験のある女性も「出産は普通のことではなく“奇跡”なんだという前提に立ったとき、絶対に男の子を産まなければならないという制度がいかにナンセンスなのかは、それこそ普通の人なら分かるはずです」と憤る。

 医療の発展とともに、皇室を取り巻く医療環境の変化も著しい。天皇・皇族の身体は玉体や聖体などと呼ばれ、手術でメスを入れることなどおそれ多いとされてきたが、昭和天皇は癌の手術のため切開手術を受けた。秋篠宮妃紀子さまも悠仁さまのご出産は皇族初の帝王切開となっている。

 2021年10月、日本労働組合総連合会(連合)の会長に芳野友子氏が女性で初めて選出。日本弁護士連合会(日弁連)でも24年4月に渕上玲子氏が会長となった。同7月、初の女性検事総長として畝本直美氏が就任。そして、英国のマーガレット・サッチャー氏が1979年に先進国初の女性首相となってから、遅れること実に46年の歳月を経て、昨年10月には高市早苗内閣総理大臣が誕生している。

 どれだけ医療が発展しても、出産は奇跡であることに変わりはない。ましてや「出生率は限界値にある」(厚生労働省幹部)とまで言われる日本で、これだけ女性のリーダーが続々と誕生する中、女性の天皇は「ノー」というのは通りにくい道理ではなかろうか。

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