「首相を前に“PB黒字化”を封印し…」 財界から不満噴出の経団連筒井会長、重ねた“失態”と2026年に抱える課題とは
「PB黒字化」の主張を封印して……
しかしながらその期待は裏切られたようだ。「責任ある積極財政」を掲げる高市氏が首相に就任し、高い支持率を保ち続ける中で、筒井氏は自らの役割を果たせていない。それを象徴したのが昨年11月に開かれた経済財政諮問会議だ。
首相に就任した高市氏が初めて議長を務めたこの会議では、民間議員に起用された積極財政派を代表する若田部昌澄早大教授(元日銀副総裁)が、それまで政府が掲げてきた単年度の財政収支を重視する基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標を「デフレ時代の遺物だ」と批判。若田部氏は政府にPB黒字化目標の撤回を求めた上で、「債務残高対GDP(国内総生産)比」という新たな財政再建目標を提案した。
これに対し、会議に出席していた筒井氏は反論しなかった。経団連事務局が事前に作成した発言メモには「PB黒字化は1つの財政再建目標として引き続き重要だ。金融市場は単年度ベースの財政収支も注視している」と記されていたという。だが、筒井氏は「市場の信認が重要だ」と抽象論を述べるにとどまった。筒井氏はこの諮問会議の前週に開かれた定例記者会見でもPB黒字化の重要性を強調したばかりだった。
PBの黒字化とは毎年の予算編成にあたり、国債費を除く政策的な歳出を税収の枠内に収めて黒字化を図る指標だ。これに対し、債務残高対GDP比は政府の債務総額とGDPを比較し、一定の比率以内に債務を抑える指標である。PB黒字化を目指すと歳出総額が抑えられるため、積極財政派からは目の敵にされている。財界幹部は「筒井氏は諮問会議で首相が推した財政積極派がPBの黒字化目標を批判したのを見て萎縮し、経団連の主張を自ら封印してしまった。首相を前に腰砕けになるような会長では、経団連の姿勢そのものが問われる」と批判する。
悪化する日中関係という“影”
諮問会議で面目を失った直後、今度は身内の不祥事で筒井氏は謝罪に追い込まれた。日本生命から銀行に出向していた社員が、銀行の大量の内部情報を無断で持ち出していたことが発覚。これを受けて日本生命は、問題発生時に担当だった副社長と専務を処分したほか、朝日智司社長と清水博会長、そして前会長の筒井氏も報酬を自主的に返上した。筒井氏は記者会見で「経団連会長として広く会員企業の皆様にもご心配をおかけした」と謝罪し、「会社に対する信頼感が毀損された。信頼回復に向かっていかなければならない」と再発防止を約束した。日頃から会員企業にコンプライアンス(法令順守)の重要性を訴えていた筒井氏だが、その言葉がブーメランとなって跳ね返ってきた。
さらに日中関係の悪化も筒井氏の指導力に影を投げかけている。筒井氏ら財界首脳は日中経済協会の一員として今月20日から23日まで北京訪問を計画していた。日中経済協会はこの時期に中国を訪問し、習近平国家主席ら中国側の要人と会談するのが恒例だが、台湾有事を巡る高市氏の国会答弁で中国側が強く反発する中で、今回は中国要人と会談できるめどが立たず、昨年末になって訪中団派遣の無期延期に追い込まれた。それでも筒井氏は訪中実現に向け、最後まで中国大使らと会談するなど交渉を続けたが、財界内には「中国に媚びを売ってまで訪中したいのか」と批判する声が上がっていた。
高い期待の下で経団連会長に就任した筒井氏は、その存在感を内外に見せることはできるのだろうか。
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