「恐るべきライバル」だが「先祖の恩を忘れている」…ブーイング騒動の「張本智和」を中国メディアはどう論じたか 議論が沸騰した「高市発言」の引用

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バランス感覚が試される

 高市首相は中国人にとって分かりやすい公敵であり、極めてイメージが悪い。日本人にとっての習近平やプーチン、あるいはそれ以上かもしれない。また、中国社会は国籍と同程度に血統を重視する傾向があり、張本が中国生まれである以上、国籍を変更しても中華系民族であることに変わりはないと見做される。

 そうしたルーツを持つ選手が中国の領土である香港で高市首相の言葉を引用したのだから、物議を醸すのは必然だったかもしれない。政治家の名前を公の場で出すことの意味や重みも、日本と中国ではまったく異なる。中国人から見れば、張本の言動は高市首相に対するゴマスリやお追従に見えたのだろう。

 パリ五輪に出場した早田ひなが「特攻資料館に行きたい」と発言して中国から猛反発を食らっていたように、卓球選手というのは、自身の言動が逐一中国メディアにチェックされると思って活動する宿命にあるのかもしれない。とはいえ、福原愛のように中国に寄り添いすぎてしまえば、日本のファンからは距離ができてしまう。卓球は中国の国技であるゆえ、相当のバランス感覚が試される世界なのだ。

冷静な見方も

 一方で、もちろん中国国内にも冷静な見方はある。

 もともと張本は、中国の卓球ファンにも人気の高い選手だった。張本は中国ではモーターバイクを連想させる“摩托(モートー)”と呼ばれており、日本で行われた国際大会の会場にも、中国人ファンたちが応援に来ていた。

 今回の騒動を受けても、中国の個人メディアでは冷静に応援しようという声もある。

「張本の国籍や過去のいざこざについては、あまりこだわり過ぎないほうがいいだろう。人には自分の選択があり、その責任を背負っている」「張本選手が中国選手と素晴らしいプレーをしてくれることを期待したい。ファンにとっては、ハイレベルな戦いこそが一番の魅力なのだから」

 1月7日からは、ドーハでWTTチャンピオンズが行われ、日本からは張本を含む8選手が出場予定。中国選手との間でどんな戦いが行われるか、注目したい。

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 関連記事「『無知』『愚鈍』『洗脳教育』…中国メディアは『早田ひな』をどう論じたか 東郷神社訪問『石川佳純』『張本智和』には『参拝したから惨敗した』」では、「特攻資料館に行きたい」と発言した卓球選手の早田ひなが、中国から猛反発を受けた騒動について詳述している。

西谷格(にしたに・ただす)
1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞「新潟日報」の記者を経て、フリーランスとして活動。2009~15年まで上海に滞在。著書に『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)、『香港少年燃ゆ』(小学館)など。

デイリー新潮編集部

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