漂う異臭、重箱の底が見えるほど少量、市販の扇型チーズが1個…正月を別の意味で盛り上げた「スカスカおせち」騒動とは

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500セットは「無理だった」

 そもそもこのお節、横浜の「B」なる飲食店が〈厳選食材を使ったお節33品〉と銘打ち、共同購入で大幅割引のクーポンサービスが受けられるという、急成長中のサイト「G」を通じて、正価2万1000円の半額1万500円で予約を受け付けたもの。

 見本写真は〈人気レストラン〉の名に恥じない豪勢なものだったから、あまりの落差に購入した500人のほとんどが、怨嗟の声をぶちまけたのだ。

 反響の大きさに「B」は全額返金を、取り扱った「G」はそれに加えてお詫びの商品を提供すると発表。さらに「B」を運営する企業の社長が辞任を表明するという事態に至ったのも、当然の成り行きだった。

「500セット作ること自体に無理があった。購入された方にはお伺いしてお詫びしたい」(「B」を経営する企業の社長)

 新年最初の教訓。お客様も食べ物も、決して粗末に扱ってはイケマセン。

(以上、「週刊新潮」2011年1月13日号掲載記事より)

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そして誰もいなくなった

 2011年の正月を炎上で盛り上げてしまった「スカスカおせち」騒動。「G」は商品企画や製造にノータッチの立場だが、同年2月にも謝罪文を発表し、8品について商品表示の虚偽があったこと、「B」のおせち販売は今回が初のため2万1000円の「通常価格」が存在しないことなどを明らかにした。

 さらに「G」はおせちの取り扱いを中止し、騒動の3カ月後に東日本大震災が発生した際はサービス自体を一時停止した。チェック体制などを万全に整え、おせちの取り扱いを再開したのは2014年11月のこと。この時すでに日本の同業他社に追い抜かれ、なおかつ共同購入型クーポンの業界自体が全盛期を過ぎていた。「スカスカおせち」以降もトラブルが相次いでいたこともブーム下火の遠因といわれている。

「スカスカおせち」から15年、現在は「B」もその運営企業も残っていない。「G」は2020年9月に日本市場撤退を発表。同年12月にサービスを停止し、翌年12月に法人格が消滅した。

デイリー新潮編集部

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