米国から逃げたい女性たち…44歳までの40%が「機会があれば海外で永住希望」 トランプ氏の人気取り政策と「男性優位」傾向で社会の分断が止まらない
アフリカや中東地域を“狙い撃ち”
筆者が注目しているのは、入国制限の強化だ。
トランプ氏は16日、今年6月に公布した入国制限対象国19カ国を39カ国に拡大する大統領令に署名した(来年1月から発効)。国家安全保障などを理由とした措置だが、入国制限対象国の数の多さと、そのほとんどがアフリカや中東地域に集中していることが特徴だ。
米紙ニューヨーク・タイムズは16日、今回の措置は特定の人種や国籍を狙い撃ちにした差別的政策という印象を強めたと報じている。
専門家からはトランプ政権は米国の移民制度を100年前の人種割当制時代に戻そうとしているのではないかとの指摘が出ているほどだ。
100年前の米国では移民規制を通じて欧州出身者を優遇する一方、アジア出身者を冷遇するという差別的な運用がなされてきた。この悪弊は公民権が盛んになった1960年代に撤廃されたが、半世紀を経て復活しつつあるというわけだ。
「男性優位化」傾向を後押し
トランプ政権2期目の関係者は100年前の米国を理想とする傾向があるが、当時の米国社会は女性差別の傾向が強かった。そのせいだろうか、米国社会ではこのところ「男性優位化」の傾向が強まっており、トランプ政権はこれを後押しする運動を展開している。
AFPは19日、トランプ政権は多様性・公平性・包括制(DEI)プログラムを棚上げにする試みの一環として、白人男性に対し、職場で人種または性別に基づく差別を受けたとして損害賠償訴訟を起こすよう奨励していると報じた。
トランプ政権の反DEI政策の深層には「有能な白人のポジションが無能なマイノリティに奪われてきた」とする白人男性の被害者意識があると言われている。逆境に立たされていると感じる彼らにとってトランプ氏は“救世主”だった。
だが、女性からすればこれほど不愉快なことはない。それを痛感しているのは若年層だ。
世論調査企業ギャラップの最近の調査で、機会があれば外国に永住したいと回答した15~44歳の米国人女性が40%に達した。2014年(10%)の4倍に匹敵する水準だ。他の年代の女性も同様の傾向にあり、全体でも約10%~20%上昇している。
このように、米国社会の分断は深刻化する一方だ。悩める超大国の今後の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。






