今では信じられないが…かつて「クリスマスイブをひとりで過ごす」のは恥ずかしいことだった…「シングルベル」時代の空気感を振り返る
ワケの分からない駆け引き
なんとも冴えないクリスマスイブを過ごした1993年だが、翌94年は山口智子主演「29歳のクリスマス」(フジテレビ系)が10月クールに放送された。最終回は12月22日だったのだが、このドラマの影響もあり、この奇妙な駆け引きが激化された面があった。
現在の若者はこんな素っ頓狂なことをしていないだろう。なぜあそこまでクリスマスイブを当時の若者は重視していたのだろうか。我々より少し上の世代、1960年代後半生まれの男性は、バブル期にイタリア料理店を予約し、ティファニー等の宝飾品を準備し、シティホテルを予約した。相手が誰になるかは分からないものの、とりあえずホテルの部屋は翌年分も予約した。
中学・高校時代にこうした逸話を聞いていた我々は、クリスマスイブに妙な幻想を抱いてしまったのだろう。それがあのワケの分からない駆け引きに繋がったのではなかろうか。かくしてこのような非モテの若い時期を過ごした人々でも社会人になるとなんとか恋人ができ、その後一定割合で結婚もする。
そして、いつしか異性にモテようがモテまいがどうでもよくなってくる。むしろ、モテた方が立場上身の破滅になるため、モテない自分でいいや、と割り切れるようになる。
そして95年、大学3年生の時である。オーストラリア人の留学生女性が「なぜ日本人はクリスマスイブにKFCのフライドチキンを食べるの?」と不思議がっていた。さらに、彼女は「なぜ日本人はクリスマスイブを恋人たちの一夜ということにしたの? 家族で過ごすものでしょ?」と言っていた。日本流の様々なことを独自解釈して新しいものを作る文化だ、と適当に答えておいた。令和を生きる若者には信じられないかもしれないが、そんな時代が25~35年前は存在していたのである。
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