カップヌードルが「248円」に! またも値上げの“意外な理由”とは
10年前は180円
〈カップ麺が食べられる人はお金のある人ですね〉
数億円分の株式を保有している個人投資家・桐谷広人氏をして、そう言わしめるほどカップ麺やインスタントラーメンは“高価”な食べ物になったのだろうか。
【写真】カップ麺から「うまい棒」まで 身近な値上がり商品一覧
即席麺メーカーの代表的な存在である日清食品が、約170品目の値上げを発表したのは12月3日のこと。同社によると、来年4月出荷分からカップヌードルやチキンラーメンなどの希望小売価格を5~11%引き上げるという。また、「日清カレーメシ」などの米を使った商品は、内容量が減らされる。
例えば、カップヌードルのレギュラーサイズは、税別で236円から248円に。10年前には180円だったことを思えば、インフレを実感せざるを得ない値段だ。
一般的に麺類の値上げと聞けば、小麦粉の価格上昇と思いがちだが、ロシアによるウクライナ侵攻以降、小麦の国際価格は下落傾向にある。
そこで、日清食品に聞いてみると、
「今回は、パーム油や調味料、また米の値上がりが主な値上げの理由です。最近続いている円安も影響しているかもしれません」(広報担当者)
パーム油の値上がり
カップヌードルとパーム油と聞いてピンときた人は勘がいい。即席麺の多くは油で揚げてある。使われるのがパーム油(アブラヤシの実から採れる油)だ。
「実は食品だけでなく、パーム油の値上がりは、トイレタリーなど、他の産業にも影響が及んでいるのです」
とは、経営評論家の坂口孝則氏。パーム油は食品のほか、洗剤や口紅などに幅広く使われている。
「パーム油の主な生産国はインドネシアとマレーシアで、この2国で全体の8割以上を占めています。ところが、最近になって、パーム油が急に足りなくなってきているのです」(同)
どういうことなのだろうか。
「インドネシア、マレーシアでは環境対策の一環として輸送に使う軽油にパーム油を混ぜています(註・現行では軽油に対して20~40%ほど混ぜている)。この、パーム油の混合比率を引き上げる動きがある。エネルギー安全保障という側面もあるでしょう」(同)
市場が逼迫(ひっぱく)するわけだ。さらには、パーム油産業への批判を避ける思惑も影響しているという。
「昔から、パーム油のプランテーションは環境団体からの批判を受けてきました。例えば、熱帯雨林の伐採による森林破壊や児童労働の問題などです。そのため、現地ではアブラヤシの栽培面積を制限しており、結果、オイルの価格が高騰しているのです」(同)
そんな事情があったのか。カップヌードルを食べる機会があったら、思い出してみるのもいいだろう。


