まさかの奇襲にファンが騒然! 2025年プロ野球「奇策に笑った人」「泣いた人」

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中日は何をやってくるかわからない

 9回2死満塁のサヨナラ機に意表をつくセーフティバントを試みたのが、中日・山本泰寛だ。

 4月30日の阪神戦、中日は4対4の9回裏、細川成也の左前安打を足場に、2つの犠打と申告敬遠を含む2四球で2死満塁のチャンスをつくった。

 そして、次打者・山本は、桐敷拓馬の初球を空振りしたあと、「確率が高いのを僕が選択しました」と2球目の149キロ真ん中ストレートを狙い、まさかのセーフティバントを敢行する。

 しかし、一塁側に転がった打球は桐敷の守備範囲となり、投ゴロの本塁封殺で一瞬にしてチャンスは潰えた。

 これにはベンチの井上一樹監督も「ビックリしましたね」と目を白黒させたが、「でも、ヤス(山本)のことを責めるつもりはない。常に打席に入ったときは、視野を広く持ちなさいよということを徹底して言っている。それでいけると思ったときは敢行しなさいと言っている。そこに対して”何をしているんだ”と言うことは一切ありません」とフォローした。

 この奇策について、ネット上でも「同点九回裏二死満塁でバント。セーフティ? 生まれて初めて見た」「1イニング3バントって何だ?」など驚きの声が相次ぎ、複数の関連ワードがトレンド入りした。

 結果は失敗に帰したが、阪神内野陣がバントをまったく警戒せず、定位置を守っていたことを考えると、左腕の桐敷が投球後に移動する一塁側ではなく、三塁側に転がしていれば、サヨナラバントが決まっていた可能性もあった。

 6月28日の広島戦でも、1点を追う9回2死一、三塁のチャンスに、三塁走者・尾田剛樹が本盗に失敗し、そのままゲームセットという珍しい幕切れが賛否両論を呼んだ。

 山本のセーフティバント同様、奇策が裏目に出た形だが、「中日は何をやってくるかわからない」と相手チームにイメージさせたことが、3年連続最下位からの4位浮上につながったと言えるかもしれない。

プロ8年目の開花

「伝統の一戦」でプロ初の4番に起用され、ファンを驚かせたのが、巨人の捕手・岸田行倫だ。

 8月30日に甲子園で行われた阪神戦、阿部慎之助監督は、負傷からの復帰後、12試合4番を打っていた岡本和真を3番に上げ、前々日は6番、前日は5番だった岸田を球団の「第96代4番打者」に抜擢した。

 開幕から出場64試合で、打率.278、6本塁打、30打点と好調を持続し、阪神戦10試合で打率.320の“虎キラー”ぶりが買われた形だ。

 試合前のスタメン発表で「4番・岸田」がコールされると、阪神ファンも驚いてざわめき、ネット上でも「きっしー四番かよ」「見間違いかと思った」「阿部監督、面白いことするな!」といった驚きの声が相次いだ。

 当日に聞かされたという岸田は「ちょっとびっくりはしましたけど、あまり意識せずに(打席に)入りました」と平常心で試合に臨む。

 4番としての初打席は、1点ビハインドの2回、先頭打者として高橋遥人の内角高めのスライダーに詰まりながらも、中前安打を放った。

 1対1で迎えた3回2死一塁の2打席目も右前に2打席連続の安打を放つと、1対2の5回2死一、二塁の3打席目も左翼線に同点タイムリー二塁打を放ち、初4番で猛打賞を達成した。

 岸田は以後3試合続けて4番を務め、87試合で打率.293、8本塁打、39打点の好成績(本塁打と打点はキャリアハイ)を残した。

 開幕前は甲斐拓也のFA加入で出番が減るとみられていた2番手捕手が、強力ライバルの加入に刺激を受け、プロ8年目の開花を果たすのも、野球の面白さである。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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