大相撲「観戦マナー」悪化で「横審」がついに苦言 「絶対にNG」の野次 大目に見ても良い声援とは

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粋な言葉

 月刊誌『相撲』の元編集長・藤本泰祐氏もこう話している。

「他にも手拍子や四股名連呼なども問題視されているようですが、漠然とマナーマナーと眉をひそめても改善の可能性は低いでしょう。やはり立ち合い。この瞬間だけ、観客も力士の呼吸に合わせてもらいたい」

 呼吸(いき)を合わせる。粋な言葉ではないか。

 力士は立ち合いに命を賭ける。立ち合いの優劣でほぼ勝負が決まる。ここを固唾を呑んで凝視しなければつまらない。

大相撲の魅力は…

 ところで。多くの外国人は立ち合いに首をかしげるようだ。

 利害の相反する両者が協力して呼吸を合わせる不合理が理解できない。徒競走のピストルや映画撮影のカチンコのように明解な合図を出せばよいのに、と思うらしかった。

 なるほど不合理なのか。ずっと相撲を観てきた身にすれば当たり前のことなので、すこぶる勉強になる。そして少しだけ鼻が高くなる。

 大兵たちが不合理を超えて呼吸を合わせる。そこに大相撲の魅力が凝縮されていると再認識したのだった。

 私は立ち合いを肴に酒5酌は呑める。だから本場所中のテレビ観戦では午後6時にはべろんべろん。日ごとに増えていてく日本酒の空き瓶。黙り込んで画面に見入るかと思えば急に絶叫して万歳する。それを繰り返す。その様が相撲好きではない家人には理解できぬようなのだった。

須藤靖貴(すどう・やすたか) 
1964年東京生まれ。1999年、『俺はどしゃぶり』で第5回小説新潮長篇新人賞受賞。スポーツ小説を数多く手がける。相撲小説に『おれ、力士になる』、『押し出せ青春』、『力士ふたたび』、『消えた大関』などがある。

デイリー新潮編集部

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