「なでしこ」「ミタ」の次は「おコメの女」…松嶋菜々子“3度目のブレイク”なるか? 最大のライバルは同じく「東京国税局」を舞台に“カネと欲望”を描いた邦画の金字塔
国税を描いた名作
国税を舞台にした映像作品の先駆けといえば、1997年に64歳で亡くなった伊丹十三監督がメガホンを取り、妻で俳優の宮本信子(80)が主演を務めた「マルサの女」シリーズがその先駆けといえるだろう。
東京国税局調査査察部(マルサ)に勤務する女性査察官と脱税者との戦いを、コミカルかつシニカルに描き、第1作の「マルサの女」(1987年)は配給収入(=興行収入から映画館の取り分を差し引いた映画配給会社の取り分)が12.5億円、第2作の「マルサの女2」は13億円を記録するヒット作に。
宮本演じる主人公の国税査察官・板倉亮子は、ボサボサのおかっぱ頭と顔のそばかすが特徴的だ。悪質な脱税に手を染めるのは、第1作では山崎努(89)演じるラブホテルなどの経営者、第2作では故・三國連太郎が演じた、宗教法人を隠れみのにする地上げ屋のボス。いずれも名演かつ怪演で、第1作で山崎が、コップにたまった水を例えに、どうしたらお金がたまるかをマルサに説くシーンは秀逸だ。
映画のヒットを受け、89年には当時人気だったゲーム機「ファミリーコンピューター」向けにゲームソフト化もされている。
「ほかにも宮本さんの上司に故・大滝秀治さん、故・津川雅彦さん、同僚役は大地康雄(74)、元女子プロレスラーのマッハ文朱(66)、益岡徹(69)らが演じました。俳優出身の伊丹監督だけに、キャスティングは絶妙でしたね。監督の徹底的なリサーチにより、『こんなことまでするのか』という脱税の手口と、『ここまでやるのか』というマルサの調査方法がなかなかエグくて、ヒット作となりました。また、淡々と進むストーリーを特徴的なBGMが盛り立てました」(映画業界関係者)
ちなみに、実際の脱税調査の現場では、「マルサの女」のように、査察官が脱税の端緒をつかみ、調査、内偵、がさ入れ、取り調べ、告発までのすべてを行うわけではない。基幹となる情報収集には常にアンテナを張っているが、対象者や企業の調査・内偵は資料調査課が行うことになっている。
「マルサの女」シリーズがあまりにも秀作だったからか、その後、国税を舞台にした映像作品は少なかったが、「カネと欲」という人間にとって普遍的なテーマを扱うこともあり、テレビ朝日では後に大人気シリーズ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の主演を務める米倉涼子(50)主演で、「ナサケの女~国税局査察官~」を2010年10月期に放送している。
米倉が演じたのは東京国税局査察部の松平松子役。脱税容疑者を内偵し、日夜奔走する敏腕査察官という設定だった。
「松平は他人と距離を置き、時に強引な調査で部内を混乱させるトラブルメーカーで、決めゼリフは『脱税するヤツは日本の道路を歩くな!』でした。『マルサの女』のように緻密なストーリー構成ではなく、決めゼリフに頼るという刑事ドラマ的な要素が強かったものの、全8話の平均世帯視聴率は13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)で、決して数字は悪くなかったのですが、『マルサの女』に比べると、どうしても薄いストーリー構成でした。それを局の上層部も悟ったのか、米倉さんが続編にゴーサインを出さなかったのか、シリーズ化はされず。同じチームで12年10月期から『ドクターX』シリーズがスタートしています」(前出・放送担当記者)
3度目のブレイクなるか?
同ドラマから16年――テレ朝は松嶋を主演に起用し、国税を舞台にした新しいドラマを放送することになった。松嶋の連ドラ主演は16年7月期のフジテレビ系ドラマ「営業部長 吉良奈津子」以来となる。ちなみに、同ドラマの全10話の平均視聴率は7.1%だった。
「松嶋さんは、96年前期のNHK連続テレビ小説『ひまわり』でヒロインを務めましたが、ブレイクしたのは2000年10月の『やまとなでしこ』(フジテレビ系)です。全11話の平均が26.4%という、とんでもない高視聴を記録しています。その直後の01年2月に反町隆史さん(51)と結婚し、『21世紀最初のビッグカップル』と呼ばれました。2人の女児に恵まれましたが、仕事復帰を果たし、11年10月、謎めいた家政婦役を演じた『家政婦のミタ』(日本テレビ系)が全11話平均24.7%、最終回は40.0%を記録する大ヒット作に。『やまとなでしこ』(フジ)でブレイクし、『ミタ』(日テレ)で再ブレイクを果たしたことになります」(同前)
主人公にビジュアルを寄せた「おコメの女」で、松嶋は「テレ朝で3度目のブレイク」を期しているかもしれない。
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