前代未聞の“ストレス料”を要求した名投手も…契約更改で出た「珍要求」や「珍要望」にファンが驚愕!
長髪を切れ
年俸の上積み要求が認められ、喜んでサインしようとしたら、球団側から思わぬ珍要求を突きつけられたのが、南海エース時代の江本孟紀だ。
1973年、2年連続二桁勝利となる12勝を挙げ、7年ぶりのリーグ優勝に貢献した江本は、旧年俸480万円から680万円へのアップ提示を受けたが、「優勝もしたことだし、もうちょっとアップをお願いしますよ」と新山滋球団社長に訴えた。すると、新山社長は快く「来シーズンの期待料」として720万円に上げてくれた。
ところが、「ありがとうございます」とお礼を言ってサインしかけると、「長髪を切れ」の交換条件を出されてしまう。
当時の江本は伸ばしに伸ばした長髪にパーマをかけ、球団上層部や野村克也監督は「あれでもスポーツマンの頭か」と苦々しく思っていた。
そこで、年俸の上積みを条件に、パーマをかけてセットしなくてもいいくらいまで短くさせようと考えたのだ。これに対し、江本は「わかりました。切ります」と素直に応じてサインしたが、翌春のキャンプイン後、見た目にはほとんど短くなっていなかった。
野村監督が「お前短くしたのか?」と詰問すると、江本は「いや、切りましたよ。自分でも情けないほど短くなっているんです」と答え、「監督、プロ野球選手といえども、ファンから見てカッコいい方がいいでしょう。みんな僕の頭をカッコいいって言ってくるんですよ」(週刊ベースボール1974年2月25日号)と煙に巻いてしまった。
球団社長や監督よりも、江本のほうが1枚上手だったようで。
京セラドームのトイレットペーパーをダブルに
球界最高年俸単独トップの座を固辞する代わりに、コンディション維持に必要な新マシンを球場に設置してほしいと要望したのが、中日・岩瀬仁紀だ。
2010年、2年連続で最多セーブ投手に輝いた“竜の守護神”は、旧年俸の4億3000万円から少しでもアップすれば、日本人選手単独トップとなる球界最高年俸を実現するはずだった。当然、球団側も500万円程度の上積みの用意をしていた。
だが、岩瀬は「1番とかそういうのはいいよ」とあっさり辞退。その代わりに当時マリナーズ在籍中のイチローが使用している最新型のトレーニングマシンをナゴヤドームに設置してほしいと要望した。
岩瀬は、前年のシーズン中、原因不明の右手のしびれで登板できない時期があり、「疲労だけでなく、ケアの問題もあったと思う。あのマシンがナゴヤドームにあれば、試合前でも、試合後でも体をケアできるから」という理由から、新マシンの設置を望んだのだ。
その甲斐あって、岩瀬は翌11年9月3日の広島戦でNPB史上初の通算300セーブを達成するなど、2年連続のリーグ優勝に貢献した。
この他には、2023年にパ・リーグ首位打者を獲得したオリックス・頓宮裕真は、「京セラドームのトイレットペーパーをダブルに変えてほしい」、昨オフ、阪神・大竹耕太郎も「(夏場の)球場の水風呂がぬるいから、もっと冷たくして」と訴えるなど、近年は珍要望というよりも、現場の選手にとって切実な訴えが相次いでいる。
[2/2ページ]

