名作アニメの舞台で学生生活を送るのは「在校生の特権です(笑)」…「涼宮ハルヒの憂鬱」の聖地「西宮北高校」の公開イベントに行ってみた

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 2000年代のライトノベル・アニメを代表する名作「涼宮ハルヒの憂鬱(以下、「ハルヒ」)」の舞台になった兵庫県立西宮北・西宮苦楽園高等学校が、11月23日、ファンや地域住民を対象に「北高・オープンハイスクール」と題し、高校の内部を1日限定で公開した。当日は事前に申し込みを行った1000人が来校し、思い思いに校内を見学した。

「ハルヒ」のアニメを製作したのは京都アニメーションだが、同社の「らき☆すた」や「響け!ユーフォニアム」などの作品と同様に、実在する風景が緻密かつ抒情的に描かれた。「ハルヒ」の舞台になった“聖地”は西宮周辺に点在し、喫茶店や駅周辺の風景などには今でも熱心なファンが訪れている。【文・取材=山内貴範】

関係者のホスピタリティが凄い

 西宮北高校にはアニメが放送された当時からファンが訪れていたというが、現役の学校ということもあり、基本的に敷地外からの見学で、校内に立ち入ることはできなかった。それゆえ今回の「北高・オープンハイスクール」は、ファンにとって念願のイベントだったといえよう。学校が公式Xで情報を告知したところ、13時間27分で1000名の枠がなくなったというから、人気が健在であることがわかる。

 筆者は偶然に告知を発見し、急いで申し込みを行い、運よく1000人の中に入ることができた。参加者として校内を巡りながら取材を行ったが、学校関係者、生徒、PTAのホスピタリティ溢れる対応に心打たれたイベントだった。なにより、生徒がファンに向かって挨拶をしてくれて、笑顔で迎えてくれたのが印象的だった。

 校舎への案内も万全だった。筆者はJR芦屋駅からバスに乗り、苦楽園で下車したが、バス停の傍には生徒が案内板をもって立っていたし、途中の道にも行き先を示すチラシが貼られていた。道中は急勾配な坂道が続くのだが、所々にPTAの方がスタッフとして立っていて、「もう少しです! 頑張ってください」とエールを送ってくれた。

 息を切らしながら坂道を上り、到着したのは西門だ。西門の先には、「ハルヒ」のアニメに何度も出てくる校舎が建っている。筆者と同じタイミングで着いたファンは、感無量といった感じで写真を何枚も撮影していた。そこから入場口に向かうと、目の前に“ハルヒ坂”と呼ばれる坂道が伸びている。奥には西宮の街並みが望める絶景が広がっていた。

登場人物と同じ気持ちで撮影ができる

 受付は生徒や教員が担当していたが、スムーズでトラブルもなく進行した。いよいよ校舎内に入ると、生徒が手作りの「SOS団 団員募集中」の看板を持ち、歓迎してくれた。オープンハイスクールでは、文理探究科とDX部の生徒が中心となり、校内の掲示物や案内などを作成しているのだという。生徒のホスピタリティに心打たれたファンも多かったはずだ。

 校内の見どころの一つが、作中に何度も登場するハルヒとキョンの教室だ。なんと、今回は2人が座っていた椅子に実際に腰掛け、記念撮影をすることができたのである。カメラのシャッターを押していたのは、西宮北高校のPTA会長を務める篠田匡史さんである。篠田さんはこのように話す。

「生徒の保護者の立場から、イベントをサポートしています。保護者の間にもファンが多いですし、私の子どもはアニメファンではありませんが、普段から写真を撮りに来る人が多いので、作品の聖地として認知しているようですね。生徒も自分たちの学校を知ってもらい、学校を好きになる機会になる、素晴らしいイベントだと思います」

 さらに、教員のなかにも熱狂的な「ハルヒ」ファンがいるそうだ。音楽教師で吹奏楽部の顧問を担当する尾和宏樹さんは、そんな一人。西宮北高校に赴任したことを「兵庫県内の150ちょっとある県立高校の中から、150分の1を引き当てたのは奇跡ですね(笑)」と語るほどで、生徒の間でも名物教師として知られている。

 尾和さんは、「赴任した4月に、アニメと同じアングルで校内の写真を撮りまくったほどです(笑)。赴任していなければ、一参加者としてこのオープンハイスクールに応募し、来校していると思いますね」と話すほど。さらに、吹奏楽部では「ハルヒ」の曲を“事あるごと”に演奏しているといい、その作品愛は間違いなく本物であった。

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