名作アニメの舞台で学生生活を送るのは「在校生の特権です(笑)」…「涼宮ハルヒの憂鬱」の聖地「西宮北高校」の公開イベントに行ってみた
ハルヒをきっかけに入学を決めた生徒も
「ハルヒ」の最初の小説が出版されたのは2003年、アニメの放送が始まったのは2006年である。しかし、2024年には新刊「涼宮ハルヒの劇場」が出版され、定期的にイベントも開催され、グッズも発売されているので、新しいファンが誕生している。作品を知ったことをきっかけに、西宮北高校に入学した生徒もいるそうだ。DX部の山田陽愛さんもそんな一人である。
「私は中学時代に『ハルヒ』を見て、北高が作品の聖地だと知りました。オープンハイスクールにきて、この学校に行こうかなと選びましたね。入学してみて感動しました。校内のいろいろなところがアニメに登場しますし、それらに実際に触れることができるのは在校生の特権ですよね(笑)」
そんな山田さんは、オープンハイスクールでARの製作に携わった。校内に置かれたQRコードを読み取ると、アニメの映像がスマホに映し出されるという仕組みだ。
「アニメを見て、いいなと思った場面の画像の提供をKADOKAWAさんにお願いして、ARを製作しました。ファンのみなさんは、作中の場面を覚えている方が多いと思います。けれども、現地でアニメの場面を見るのは特別だと思うんですよ。実際、ファンのみなさんのお顔がキラキラしていて、頑張って作ってよかったなと達成感が得られました」
「ハルヒがまるで友達のような感覚」
校内の教室には、涼宮ハルヒが結成した“SOS団”の部室が再現されていた。ハルヒが座る席にはパソコンと「団長」と書かれた三角錐があり、中央の机にはオセロやトランプが置かれ、壁には太陽を思わせるオブジェが飾られ、まさに今ここにハルヒたちSOS団がいるかのような雰囲気だ。
再現を担当したのは、文理探究科のローカルコミュニケーション班の生徒である。その一人、正井柚奈さんがこう話す。
「製作中は不安もありましたし、ファンのみなさんの目にはどう映るだろうと、心配していました。でも、Xに“部室があったよ”とか“ハルヒの椅子がある”などのファンのみなさんからの反応がありましたし、椅子に座って楽しんでくださっているのを見て、昨日までの不安がどっかに行ってしまいましたね」
そう喜ぶ正井さんは、学校が聖地になっていることについて、「ちょっと不思議な感じですね。ハルヒがまるで友達のような、そんな感覚でしょうか。日常のなかでアニメの世界に入れる特別感を感じながら、毎日学校に通っています」と話す。生徒の間にも「ハルヒ」の世界観が受け入れられているようだ。
「“ありえない夢”が現実になり、本当に嬉しかった」
オープンハイスクールの参加者には、海外出身者のファンの姿も見られた。京都アニメーションの作品はとりわけ海外での人気が高い。映像美やシナリオの素晴らしさはもちろんだが、何気ない高校生活の日常を描いていることが、外国人には新鮮に映るからだといわれている。
熱心な「ハルヒ」のファンという中国出身の黄毛蔚さんは、今回のイベントの感想をこう話してくれた。
「もし、10年前、高3の私に“十年後のある晴れた日に、君は海を越え、数千キロ離れた北高の教室で、キョンのように窓辺に座り、西宮の街をそっと見渡している”と告げる人がいたなら、私は夢物語だと笑い飛ばしていたでしょう。今回、その“ありえない夢”が現実になって、本当に嬉しかったですね。
ハルヒのように元気な北高の生徒たちの姿、そして生徒たちの笑顔を眺め、廊下から流れてきた『優しい忘却』に耳を澄ませた瞬間、次元の壁が消えて本当に『ハルヒ』の世界へ足を踏み入れることができたように感じました。この夢を紡いでくれた生徒のみなさん、先生方、主催者の方々に心から感謝します」
今回、筆者の知人(しかも、その多くが20年来のファンである)も何人か参加していたが、誰もが一様に感激していたのが印象的だった。目の前に広がるアニメと同じ風景に感動したのはもちろんだが、それをさらに引き立ててくれたのが、イベントを運営した学校関係者のホスピタリティだったのは間違いない。ぜひとも2回目を開催してほしい、そう思わずにいられなかった、特別なイベントだった。
第1回【2000年代を代表する名作「涼宮ハルヒの憂鬱」初の“聖地”公開…作品の舞台となった高校では「教員のなかにも熱狂的なファンがいます」】では、「涼宮ハルヒの憂鬱」の舞台となった兵庫県立西宮北・西宮苦楽園高等学校が、なぜ学校公開を行なったのか、関係者に詳しく話を聞いている。
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