ドラッグ密売人のシングルマザー役で「北川景子」に主演女優賞…人気女優があえて“汚れ役”に挑む理由とは
絶望的なキャラクター
実は、汚れ役や悪役に憧れる俳優は多いという。実生活の自分とは異なる人物を演じる醍醐味や、時として主役を食ってしまう迫力で作品の評価を高めるきっかけとなることもある。自身のキャリアを大きく転換させるターニングポイントにもなるようだが、他の女優のケースではどうだろうか。
信用詐欺師グループのメンバーを演じた「コンフィデンスマンJP」シリーズが代表作で、何度も複数の映画賞を戴冠している長澤まさみ(38)だが、「MOTHER マザー」(20年)でそれまでのイメージを覆す汚れ役に挑戦した。
「明るく快活な役が多かった長澤さんですが、同作で演じたシングルマザーの秋子はとにかく絶望的なキャラクター。若くして1人息子を産むも、典型的なネグレクト(育児放棄)。男を取っ替え引っ替えして、何日も家を空けることも。おまけに、子どもを学校に通わせず、自分の祖父母に金を借りに行かせるなど、救いようのない役どころです。終始、自堕落な雰囲気を醸し出し、男といるときは女のオーラ全開。そして、物語はかなり胸クソの悪い結末を迎えるのです」(映画ライター)
同作はPG12指定(12歳未満の年少者が鑑賞する際は、保護者の指導や助言が適当)の社会派作品で、公開規模が小さかったことから興行収入は2億円ほどにとどまったが、「コンフィデンスマンJP―プリンセス編―」(20年)とともに評価され、「第44回日本アカデミー賞」の最優秀主演女優賞を受賞した。
「その後、カンテレ・フジ系のドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(22年)では、仲間たちとえん罪事件解明に奔走するテレビ局の女性アナウンサーを熱演しました。今年公開の主演映画『ドールハウス』では本格的ホラーに初挑戦し、『おーい、応為』では時代劇に初主演。『ドールハウス』は興収18.7億円とヒットしたものの『応為』はヒットには及ばずでしたが、女優としての可能性を模索しつつ、演技の幅は広がっています」(同前)
他には菅田将暉(32)とダブル主演した王道ラブストーリーの映画「花束みたいな恋をした」(21年)が興収38.1億円の大ヒットとなり、同作で「第45回日本アカデミー賞」の最優秀主演女優賞を演じた有村架純(32)。劇場公開とNetflixでの配信が同日となった「ちひろさん」で、弁当屋の店員ながら、元は売れっ子の夜の街の女性だった主人公を演じた。
「デビュー後にブレークを果たしてからは、圧倒的にラブストーリーへの出演が目立った有村さんですが、21年にWOWOWで連続ドラマが放送され、22年に映画も公開された『前科者』では保護司を演じました。そして、迎えた『ちひろさん』。コミックが原作で、役作りは原作に寄せる形に。これまでなかった、渾身の情交シーンもありました」(芸能記者)
感情移入しづらいだけに
21年1月に結婚を発表し、22年4月に第1子を出産。産休・育休を経た石原さとみ(38)が復帰主演作に選んだ映画は、娘の失踪事件をきっかけに、情報の荒波に巻き込まれ、翻弄されていく母親とその家族たちの姿を描く「ミッシング」(24年)だった。
石原は、娘の失踪時に好きなアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷を受け我を失う母・沙織里役を演じた。
「デビュー以来、着実にステップアップを重ねて来た石原さんですが、いい意味で自分をぶっ壊そうと思い、オファーを受けた意欲作だったそうです。とにかく、錯乱して泣いたりわめいたりというシーンが多く、感情が高ぶり過ぎて失禁するシーンも。母親になっての復帰作だったので、かなり感情移入したのかもしれません。興収は5億ほどでしたが、演じる気迫は伝わってきました」(同前)
一般に汚れ役は、見る側(観客)が感情移入しづらいキャラが多いだけに、必ず高評価やヒットにつながるわけではないのが難しいところだが、新たな挑戦に期待したい。




