「“オタ芸”は私のファンが発祥」…デビュー39周年の正統派アイドルが明かす「ファンと築いた絆の歴史」

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【前後編の後編/前編を読む】実家侵入、玄関前に“カーネル像”、結婚指輪まで送られて…「正統派アイドル」がデビュー39年で掴んだファンとの“ちょうどいい距離”

 デビューから39年。おニャン子クラブ時代から「正統派アイドル」として第一線を走り続ける渡辺美奈代さん(56)は、現在もファンミーティングやバースデーライブを欠かさない。驚くのはライブ中、彼女が数多いファンの1人1人の名を呼び、気さくに声がけをしていること。80年代にはファンの間で住所や電話番号が売り買いされ、自宅玄関にプレゼントが置かれるほどに“距離感が近すぎるアイドル”だった美奈代さんだったが……。

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 結婚を機に、一度は「芸能界引退」も考えたという美奈代さん。

「デビューして10年、ちょうど一区切りついたかなと思っていたんです。でも夫が“せっかくここまで続けてきたんだから、やめなくていい”って背中を押してくれて」(美奈代さん、以下同)

 そんな夫だけでなく、いまでは息子たちもが彼女の芸能活動を支えている。ライブの手伝いや挨拶、ファンクラブの運営……息子がダンサー仲間を集めてイベントを企画することもあれば、ファンが子どもたちのライブや試合の応援に駆けつけることも。

「ファンの方たちが子どもたちのライブにまで来てくれるって、本当にありがたいですよね」

 ブログで日常生活を公開していたことにより美奈代さんの家族が、ファンにとっても大切な“推しの家族”となったことは間違いない。こうして築かれた信頼関係は、やがて新しい文化、新しい「アイドルとファンのありかた」を生み出す力となった。

ロマンスが打てなければオタ芸ではない

 美奈代さんがファンとの関係性の歴史を語るうえで欠かせないのが、1989年11月22日にリリースされたヒット曲『恋愛(ロマンス)紅一点』だ。この曲のためにファンが作り上げた「ロマンスダンス」こそが、後に「オタ芸」と呼ばれるものの土台となる。

 オタ芸とは、アイドルの歌うステージの客席で、サイリウムを振って踊る「アイドルオタクたちの応援芸」のこと。

 足を大きく開き、身体を少し傾け、腕を大きく回す「ロマンス警報」(ロマンスが来るよのサイン)からの、4回転目から始まる「ロマンス」(左右交互に腕・胴・足を一直線にし、腕を回す)。この技は、おそらく“オタ芸”と聞いて素人が真っ先にイメージする動きだろう。

「ロマンスが打てなければオタ芸ではない」とまで言われ、「基本の振り」として広く知られるもの。その元祖は、美奈代さんの曲の応援ダンスだったのだ。

「初めて見たときは“よさこいみたい!”って衝撃を受けました(笑)。それまでは笛を吹いたり、手を振ったり、私が歌うのを応援するだけだったのが、ふと気づいたら“うわっ、自分たちで踊り出した!”ってビックリして(笑)」

 ファンが独自に作り、それを今でもライブで踊ってくれること、またオタ芸として世間に浸透したことはとても嬉しい、と美奈代さん。それだけに、時としてネット上に流れる《オタ芸はハロー!プロジェクト系コンサートから生まれた》といった誤情報については……。

「オタ芸の文化は、私のファンが作り出したもの。だから、そういうネットの記事には“ちょっと違うよ~”って言いたくなっちゃうんですよね(笑)」

 それは単なる応援の枠を超えた、渡辺美奈代とファンの絆の証なのだ。

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