大関昇進“21歳ウクライナ出身力士”が「背負っている覚悟が違う」と言われる理由 「残っていれば銃撃戦に巻き込まれた可能性も…」

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【全2回(前編/後編)の後編】

 ウクライナ出身力士として初の賜杯を手にし、大関昇進を果たした安青錦(あおにしき)。未成年飲酒や“悪ノリ”が過ぎる力士同士の乱痴気騒ぎなど、耳を疑うような不祥事ばかりが聞こえてくる角界において、とにかくひたむきだというが、その背景にはわが国では想像しがたい厳しい現実を生き抜いてきた過去があった。

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4番目の年少記録

 21歳8カ月での初優勝は、年6場所制となった1958年以降、4番目の年少記録でもある。

 九州場所の千秋楽を迎えた11月23日、安青錦は本割で大関琴櫻(28)に、得意の内無双を披露。見事な勝利を果たすと、優勝決定戦でも横綱豊昇龍(26)に送り投げを決めたのだ。

 前編【「やんちゃな遊び人が多い角界では珍しく…」 大関昇進「21歳ウクライナ出身力士」不祥事とは無縁の“ピュアな素顔”】では、その雄姿に付け人が涙をこぼすほど慕われている安青錦の素顔について報じた。

開戦の直前まで相撲合宿

 そんな安青錦が来日したのは2022年4月。ウクライナで大学進学を考えていたが、ロシアの軍事侵攻を受けた。その時、たまたま相撲と関わっていたことで、運命が変わる。

 ウクライナ相撲連盟の松江ビオレッタ代表は、

「戦争が始まる前々日の22年2月22日まで、安青錦はウクライナのハルキウで相撲合宿をしていました。翌23日、何とか首都キーウに戻って、難を逃れたのです。合宿場所はロシアから近く、仮にそのまま残っていれば、銃撃戦に巻き込まれた可能性もある。命の危険を感じたと思います」

「背負っている覚悟が違う」

 そこで安青錦は、力士になることを決めたという。平和な国では味わうことのない緊張感。角界関係者は、安青錦のことを「背負っている覚悟が違う」として、こう語る。

「元関脇安美錦こと安治川親方(47)はもともと、外国人の弟子を取る意向がなかったようです。しかし、兵庫県の報徳学園高相撲部で稽古をしていた、来日間もない安青錦を目の当たりにして、考え方を変えたといいます。稽古に取り組む姿勢がストイックそのものだったそうですね」

 前編【「やんちゃな遊び人が多い角界では珍しく…」 大関昇進「21歳ウクライナ出身力士」不祥事とは無縁の“ピュアな素顔”】では、ウクライナでの厳しい日々を生き抜いた安青錦のひたむきな素顔について報じる。

週刊新潮 2025年12月4日号掲載

ワイド特集「驚天動地」より

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