西武の生え抜きレジェンド「栗山巧」が引退表明…2000本安打達成でもイケメンぶりでもない、ファン感涙のエピソード「球団史上最高の四球」とは

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「引退する試合で、打席に立ってもらいたい」

「栗山さんといえば、打撃成績と比例して、非常に選球眼もいい。だから、大事な場面で四球をしっかり選べる選手です。特にファンの間で“ライオンズ史上、最高の四球”と呼ばれている名場面があります」(前出・50代ファン)

 それは2015年9月27日の西武対楽天戦――2万3013人の観客がスタンドを埋めた、森本稀哲(44・現日本ハムコーチ)の引退試合だった。

 3-1と、西武2点リードで迎えた8回の表、森本はライトの守備についた。その裏、西武の打順は1番から。「7番の森本まで回ってくる可能性は低いと思った」という前出の40代ファンは、この試合をスタンドで観戦していた。

「8回の裏、1番の秋山翔吾(37・現広島カープ)が左中間に2塁打で出塁したのを機に打線はつながり、4番・中村の犠牲フライなどで2点を追加。1アウトランナー1塁で、5番のエルネスト・メヒア(39)に打順が回ってきました」

 メヒアは初球をサードゴロ。すわ、ダブルプレーか……と思ったが、メヒアは全力疾走で駆け抜け、1塁はセーフに。代走に鬼崎裕司・現3軍野手コーチ(42)が起用され、打席に入ったのが6番、栗山だった。スタンドやベンチから「稀哲さんに回せー!」の大声援……この重要な場面で栗山は、登場曲であるクレイジーケンバンドの「あ、やるときゃやらなきゃ、ダメなのよ。」の歌詞の通り、見事にやり遂げる。

 右肩を小刻みに上下させるおなじみの間の取り方で打席に立った栗山。1球目は見逃しでストライク。2球目は高めのボール。3球目も内角低めのボール。4球目はファールとなり、2-2の並行カウントとなった。

「何とか見極めて三振だけはしない、という気持ちだった」

 後のインタビューで語った通り、栗山は続く5球目をファール。そして6球目、楽天投手の相沢晋(38)が投じた、高目ながらきわどいコースを冷静に見極めてボール。これでフルカウントになった。

「絶対に森本さんにつなぐという栗山さんの気持ちが、スタンドにも伝わってきました。それでも、相当なプレッシャーだったと思います」(前出・ファン)

 7球目、これもファール。球場内がどよめく。バッティンググローブをはめて準備する森本。運命の第8球は外角のきわどいコースに投じられた。栗山は見送る。そして、球審の手は上がらない……球場は大歓声に包まれた。森本は溢れる涙を拭いながら、打席に立った――。

「僕だけでなく、(チームの)みんなが稀哲さんにはいろいろとやってもらいました。だから何とか稀哲さんが引退する試合で、打席に立って終わってもらいたいと」

 試合後の栗山の話だが、その言葉通り、現役引退の最終打席を実現させたのだ。

言葉ではなく、姿で学ぶ

 レオのレジェンドには、まだまだエピソードがある。

 パインアメといえば、阪神・岡田彰布前監督(67)が、2023年シーズン中の7月に「1試合に7~8粒なめている」と明かして注目されたが、同監督より先にパインアメの存在を野球ファンに広めたのも栗山。

 パインアメの製造元であるパインは大阪市の会社で、兵庫県出身の栗山も「好物」と明かしていた。21年の2000本安打を達成した際には、記念として同社がオリジナルパッケージの商品を作成、ホームゲームに駆け付けたファンに配られた。

 若手のころ、朝7時から早出練習に参加し、試合が終わった後も打ち込みを欠かさない。夜間の室内練習場での打ち込みができなくなるからと、若獅子寮の退寮が決まっても延期を懇願したほど。木村文紀・3軍野手コーチ(37)は、栗山の2000本安打達成の際に寄せたコメントで「栗山さんは言葉ではなく、姿で学ぶことが多かった憧れの存在」と語っている。

 締めくくりのシーズン、どんな伝説を残してくれるのか……。

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