米国人53%が「大富豪は民主主義の脅威」と回答 トランプ氏「新NY市長支持」に急変の背景には「社会主義の台頭」も

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トランプ氏の側に事情がある?

 トランプ米大統領は11月21日、ホワイトハウスで次期ニューヨーク市長のマムダニ氏と会談した。トランプ氏はマムダニ氏を「狂った共産主義者」と批判していたが、会談後の会見で「党派の違いなどない。強固で安全なニューヨークを実現するために彼を支える」と協力する姿勢を表明した。

 トランプ氏が支持層(MAGA派)からの反発を覚悟の上で融和に動いた背景を巡り、様々な憶測が流れている。

「優れた政治的戦略家としてのイメージを示すことが狙いだった」との見方が有力だが、トランプ氏には歩み寄らなければならない事情があったと筆者は考えている。マムダニ氏が掲げる「生活費高騰への対応」が米国民の最大の関心事項になったからだ。

 ロイターの最新の世論調査で、トランプ氏の支持率は38%と、2期目で最低水準に落ち込んだ。生活費高騰への対応の不満などが主な要因だ。

 トランプ氏は、インフレは収まったと主張しているが、直近(今年9月)のインフレ率は3.0%に拡大した。関税のせいで牛肉やコーヒーなど身近な食品価格が高騰している。

 事態を重く見たトランプ氏は14日、牛肉やコーヒーなど幅広い輸入食品を相互関税の対象外とする大統領令に署名した。関税はインフレをあおるものではないと強弁してきたトランプ氏にとって痛恨の方針転換だ。

生活費高騰抑制に即効薬みつからず

 人工知能(AI)向け電力需要の急増で光熱費もうなぎ上りだ。米シンクタンク「センチュリー財団」は、今年第2四半期の平均的な光熱費は前年に比べて12%上昇したとの分析結果を示した。

 高インフレは米国民の生活を圧迫している。米銀バンク・オブ・アメリカは最新の調査で、米国の約4分の1の家庭が毎月の収入を生活費に使い切ってしまう状態にあることを明らかにした。
 トランプ氏はホワイトハウスにウォール街のトップを招き、生活費高騰抑制に向けた方策を議論したが、即効薬がみつからないのが現状だ。

 トランプ氏にできることは閣僚への八つ当たりしかないのかもしれない。トランプ氏は19日、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げしなければベッセント財務長官を更迭すると示唆した。

 この発言の背景には、ベッセント氏がパウエルFRB議長の解任阻止に動いたことがある。だが、政権の重鎮であるパウエル氏を解任すれば、トランプ政権は一気にレームダック化してしまうだろう。

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