米国人53%が「大富豪は民主主義の脅威」と回答 トランプ氏「新NY市長支持」に急変の背景には「社会主義の台頭」も
米国で深まるビリオネアへの反発
トランプ氏の苦境を尻目にマムダニ氏は飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
マムダニ氏のキャッチフレーズである「アフォーダビリティー(手の届く生活コスト)」は、米国政治の主要争点に躍り出た感がある。その政策もニューヨークにとどまらず、米国全土で人気を博している。
注目すべきは「ビリオネア」と呼ばれる大富豪への反発を喚起した点だ。
世論調査企業ユーガブによれば、マムダニ氏の政策提案のうち6つが、米国全土で過半数の支持を集めている。最も人気が高いのは、富裕層と法人への増税だ。回答者の69%、共和党支持者の40%がこの考えを支持した。
米調査企業ハリス・ポールの世論調査でも同様の傾向がみられる。ビリオネアが米国の民主主義を脅かしていると回答した米国人は53%と、初めて過半数となった。さらにビリオネアへの幻滅から、回答者の71%が「ビリオネア税」の導入を支持し、53%が保有資産額の制限を求めている。さらに3分の1以上が「米国経済はビリオネアを優先する不公平な競争環境だ」と回答した。
これらの調査から、米国で社会主義的な傾向が強まりつつあることがわかる。その傾向が特に強いのはミレニアル世代(1980年代前半から1990年半ばまでに生まれた世代)だと言われている。
資本主義の恩恵を感じられない
インターネット決済サービス大手ペイパルの創業者であるピーター・ティール氏は、2020年に「なぜミレニアル世代は社会主義を支持するのか」と題するコラムを発表した。そこで論拠に挙げたのは、学生ローンの負担の大きさや住宅価格の高騰だ。長期にわたって資本がマイナスの状態になるため、資本主義システムの下で恩恵を感じることができず、これに反発するようになるのは当然という主張だった。
最近になって、彼の主張が再び関心を集めている。学生ローンや住宅を巡る環境が5年前と比べて一層深刻になっているからだ。
学生ローン債務が合計で1兆7000億ドル(約267兆円)に膨らむ中、トランプ政権は新型コロナウイルスのパンデミック後の返済猶予措置を5月に撤廃した。そのため約3分の1で返済が延滞しており、今後、デフォルト(債務不履行)の急増が危惧されている。
マイホームも今や高嶺の花だ。全米不動産業者協会によれば、米国で初めて住宅を購入する人の年齢中央値が40歳に上昇し、過去最高となった。2021年は33歳だったが、ここ数年は価格と住宅ローン金利の大幅上昇が影響し、多くの人が持ち家の取得を先送りせざるを得ない状況に追い込まれている。
「米国で社会主義が政治の争点になる」と断言するつもりはないが、今後の動向について最大の関心を持って注視すべきだ。
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