大谷翔平でも難しい「長嶋茂雄賞」 “意外な該当者”を考えてみると

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「ハードルが高過ぎる」

「長嶋茂雄賞」なるものが創設された。

 日本野球機構によると〈本年6月3日に死去された故・長嶋茂雄氏の功績を称え〉〈走攻守で顕著な活躍をし、かつ、グラウンド上のプレーにおいてファンを魅了するなど、わが国のプロフェッショナル野球の文化的公共財としての価値向上に貢献した野手〉に授与されるという。

 沢村賞の野手版だろうか。

 沢村賞は「15勝以上」など七つの選考基準を設けているが、長嶋賞は基準を設けるか否かを含めて定かではない。ミスターの名を冠する以上、それ相応の大打者に授けることになろうが、

「もう既にハードルが高過ぎますけどね」

 と、スポーツ紙デスクが苦笑する。

「メジャーの『ハンク・アーロン賞』は打撃成績のみを評価していますが、長嶋賞は“走攻守”を求めています。たしかに、ミスターは三拍子そろった名手でしたが、そんな選手はそうそういません」

記録より記憶に残る人

 今季なら、セ・リーグで本塁打、打点の2冠に輝き、ゴールデングラブ賞も獲得した佐藤輝明(阪神)が候補といえそうだが、盗塁は10と物足りない。

“走攻守”といえば、3割30本塁打30盗塁の「トリプルスリー」という称号が思い浮かぶ。近年は山田哲人や柳田悠岐が成し遂げたため身近に感じるが、これまで12度しか達成されておらず、出現頻度は6年に1度あるかどうか。ミスターも達成できていない。

“守”もネックになる。メジャー選手は対象外だが、例えばトリプルスリーをも凌駕する50本塁打50盗塁をマークした昨季の大谷翔平。あれほど活躍しても、DHは守備をしないから受賞できないことになる。2026年にはセもDH制を導入するため、そんな残念な事例が増えそうだ。

 ここで発想を転換しよう。条件の後段にある〈ファンを魅了〉に比重を置いたらどうか。長嶋は「記録より記憶に残る人」だった。ならばどんな選手がふさわしいのだろう。

「1999年、延長戦で敬遠の球を打ってサヨナラ打にした新庄剛志。あるいは04年、死球を受けて左手首を骨折しながらも翌日の試合で右手一本だけで安打を放った金本知憲とか。それこそ毎年出てくるとは思えませんが」

 しばらくは〈該当者なし〉になるのかな。

週刊新潮 2025年11月27日号掲載

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