「高市政権」支持率70%超でも…なぜ「円安」が急激に加速するのか 「1ドル=160円」が現実味を帯びる理由
アベノミクスが円安の“素地”
一方で、高市政権を支持する有権者は増え続けている。共同通信が11月15、16日に実施した世論調査で内閣支持率は69・9%に達し、10月に比べると5・5ポイント上昇した。同じく、読売新聞社は11月21~23日に実施した全国世論調査で、高市内閣の支持率が72%に達したと報じている。
国民的人気を追い風に、高市首相の政権基盤は盤石なものになりつつある。だが、高市政権が発足してからは円安が加速している。一体、なぜなのだろう?
インフィニティ合同会社チーフ・エコノミスト兼テラ・ネクサス合同会社CEOの田代秀敏氏は「現在の円安を説明するためには、安倍晋三さんが首相に就任された2012年12月からアベノミクスが始まり、翌13年3月に黒田東彦さんが日本銀行の総裁に就任した時期を丁寧に振り返る必要があります」と言う。
「当時の日本経済はデフレに苦しんでいました。安倍さんはアベノミクスの第一の矢として『異次元金融緩和』を掲げ、日銀は2013年4月から大規模な金融緩和政策を実施します。民間が持つ国債や金融商品を大量に買い上げることで、10年物の国債利回り(長期金利)を0%前後にまで押し下げたりしたのです。蛇口を全開にして大量の水を流すように、大量の円を市中に流しました。基本的に少量の希少品は高値で取引されます。これに対して、大量生産されている商品は安値で取引されます。通貨も同じです。円の流通量が少なければ円高基調となり、円の流通量が多ければ円安基調となります。『異次元金融緩和』は現在の歴史的な円安が生まれる“素地”を作ったと言えるのです」
「金利を今、上げるのはアホやと思う」
日銀総裁の任期は5年間で、再任はないという“暗黙のルール”があった。だが黒田氏は140年近い日銀の歴史で初めての異例中の異例の再任を果たし、2期を務めて2023年4月に退任した。そして次の総裁には、日本銀行の140年近い歴史で初めて経済学者が異例の就任を果たした。それが現在の植田和男総裁である。
「植田さんは1998年から2005年まで日本銀行の意思決定機関である政策委員会での投票権を持つ審議委員を務めました。そして退任した後、『ゼロ金利との戦い』というタイトルの著書を2005年に出版したのです。まさにアベノミクスはゼロ金利政策であり、その“出口戦略”を多くの人が注視していました。実は黒田さんの“後継者”探しは難航を極めたのです。未曾有の異次元緩和の後始末という極め付けに困難な課題に直面することになるため、多くの人が辞退しました。しかし植田さんに白羽の矢が立ち、『ゼロ金利との戦い』を執筆した経済学者が日銀総裁に就任することが決まりました。これで金融関係者は誰もが『日本はゼロ金利政策を止める』、『異次元緩和は終わる』と受け止めたのです」(同・田代氏)
2023年4月9日、植田氏が日銀総裁に就任した。そして24年8月14日に当時の岸田文雄首相が自民党総裁選の不出馬を表明し、9月12日に総裁選が告示された。
総裁選に立候補していた高市氏は9月23日公開のインターネット番組で、「金利を今、上げるのはアホやと思う」と、植田総裁を牽制するかのような発言を行った。
田代氏は、この発言に注目する。冒頭に掲げたグラフを用いて、第2回【“止まらない円安”を前に金融関係者が注目する「高市首相の発言」…識者は「実質的な為替レートは1ドル=270円」「すでに50年前と同水準」と試算】では、アメリカと日本の物価を考慮に入れると、円の価値はさらに下がり、今から50年以上前の水準となるという衝撃的な事実をお伝えする──。
註:ドル円レートは三菱UFJ銀行の「外国為替相場チャート表」より
[2/2ページ]

